eコラム「北斗七星」
- 2017.06.20
- 情勢/社会
公明新聞:2017年6月20日(火)付
日本で最初に「おしべ」「めしべ」などの言葉が使われたのは1829年刊行の『泰西本草名疏』。同書はスウェーデンの学者が著した『日本植物誌』を訳述したもので、著者は、江戸末期から明治にかけて医学、植物学、博物学で多大な業績を残した伊藤圭介だ◆先日訪ねた名古屋市東山植物園の植物会館で紹介されていた。伊藤は名古屋に生まれ、幼い頃から医学や植物について研究し、動植物に造詣が深いシーボルトの教えも受けた。その功績は外国でも高く評価され、オランダの学者は、シモバシラ、スズランなどの学名に<ケイスケ>の名を付けているほど◆伊藤は種痘の普及に尽力し、洋書の翻訳や通訳としても活躍。その後、明治新政府から呼ばれて69歳で文部省へ出仕し、東京の小石川植物園で研究を重ねた。79歳で東京大学教授、86歳でわが国第1号の理学博士となり、老いてますます輝きを放った◆人物叢書『伊藤圭介』(杉本勲著=吉川弘文館)によれば、伊藤は83歳の元旦に家訓を家族に与え、自らもその家訓通り実践し、99歳まで生き抜いた。同家訓の一節に「人に交るには信実温和にして虚言を言わず」とあった。人と穏やかに接し、欺く言葉を言わないようにとの戒めだ◆偉人の教訓を胸に刻み、誠実な対話に徹して公明党の真実を訴え続けたい。(典)