eコラム「北斗七星」

  • 2017.06.22
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年6月22日(木)付



「ものの見方には『鳥の目』と『虫の目』があり、『鳥の目』を養うには司馬遼太郎の小説を、『虫の目』なら山本周五郎を読むのがいい」。新聞で以前、目にしたくだり◆この山本周五郎は1903年のきょう生まれた。亡くなって半世紀たつが、今なお愛読者が多い作家だ。「つねに日の当たらぬ庶民の側にたち、既成の権威に敢然と抵抗する態度を持し続けた」(日本大百科全書)からだろう◆その作品に『笄堀』がある(『髪かざり』収録)。3万の石田三成軍に包囲された忍城留守部隊の30余日間の籠城戦を描いたものだ。留守を守るのは約300人の兵、老人と婦女子だけ。総大将は城主の奥方◆戦を前に婦人たちだけで城壁の外郭に壕を掘るが、その作業場である日、笄(髪飾りの一種)が見つかる。総大将となった奥方のものだった。お忍びで作業に加わっていたのだ。驚く婦人たち。奥方の姿に皆の心が一つになる◆やがて戦を終え、城を守りきった奥方が言う。農夫も商人も、女も子供も、いざと心を決めればこれだけの働きができる。戦いは城の備えでもなく武器でもなく、精鋭の兵だけではない、領内の全ての者が一つになって立ち上がる心にあるのだ◆あす告示される東京都議選。公明23氏の全員当選へ心を一つに反転攻勢をかけていきたい。(六)

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