e建設業の働き方改革 人手不足が深刻。処遇改善を
- 2017.07.05
- 情勢/解説
公明新聞:2017年7月5日(水)付
建設業の働き方改革を巡る論議が本格化している。深刻な人手不足を解消するためには、就労環境を整備して若い人材を確保することが欠かせない。
国土交通省の有識者会議が、今後の建設産業政策に関する報告書を取りまとめ、建設従事者の長時間労働の是正や処遇改善を強く進めるよう提言した。
背景には、人手不足への危機感がある。建設業の就業者数は減少傾向が続き、55歳以上が占める割合も全産業の平均を上回る。とりわけ大工、とび職といった技能労働者の高齢化は深刻で、今後10年間で100万人程度が離職する見込みだ。
このため若い人材の確保が急務だが厳しい就労環境が若者に二の足を踏ませている。
厚生労働省の調査によると、建設業の年間総実労働時間は全産業の平均より約300時間も長い。国交省調査では、週休2日もしくは4週間で合計8日の休日が実現できている人は、15%程度にとどまっている。
人手不足による長時間労働を嫌って若い人材が集まらず、人手不足がさらに深刻化する―この悪循環をどう解消するか。
検討課題の一つが、労働者の融通制度の導入だ。
これは、受注量が多く人手が不足している業者へ、人手に比較的余裕のある別の業者から労働者を一時的に派遣するもの。労働者にとっては長時間労働の解消と同時に、年間を通して仕事量が一定し、収入も安定するというメリットが期待できそうだ。
落札制度についても焦点が当たっている。具体的には、工事単価を重視するのではなく、労働者の賃金や休暇の確保などを含めて評価する「総合評価落札方式」の一層の普及である。まずは公共事業の発注元である国や自治体の積極的な取り組みを求めたい。
東日本大震災からの復興や東京五輪・パラリンピックに向けて国内の建設需要は依然として高い。人手不足の解消は喫緊の課題である。
処遇改善は当然として、一人一人の労働者の健康と安全が最優先されなければならない。働き方改革は、業種を問わずこの点が大前提であることを指摘しておきたい。