e認知症高齢者 地域で見守り

  • 2017.07.06
  • 情勢/社会
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公明新聞:2017年7月6日(木)付



行方が分からなくなる認知症高齢者が増える中、先端技術や地域住民の力を生かし、行方不明防止や早期発見に向けた対策が各地で広がっている。先進的な取り組みで注目される埼玉県入間市を訪ねた。


爪のシールで身元確認


キーホルダーなども配布 徘徊の早期発見へ対策 埼玉・入間市

入間市は2016年11月から、徘徊の恐れのある認知症高齢者がいる家族の希望者に対し、高齢者の手足の爪に貼るQRコード付き身元確認シールの無料配布を始めた。こうしたシールによる見守りサービスは全国初の試み。

スマートフォンでQRコードを読み取ると、高齢者の身元を特定する番号と市役所の電話番号が画面に表示される仕組み。読み取った情報を市に伝えると、家族に連絡が届く。

シールは、地元の情報通信企業が開発。入浴などで水にぬれても、2週間以上はがれないという。

同市は02年から、徘徊対策として、全地球測位システム(GPS)端末を有料で貸し出したが、高齢者が端末を持たずに外出することが多く、予防につながらなかった。このため手軽に利用できるシールを導入した。

QRコードを使った身元確認は他の自治体でも取り入れているが、バッグなどに取り付けるものが主で、家族などから「認知症と分かってしまうので抵抗がある」との声も多かった。

そこで同市は、警察などが身元確認を行う際、衣服や靴、靴下に書いてある名前などを調べることから、シールを手足の爪に貼っても効果があると判断した。シールの申請は、7月3日時点で40件になった。

また、市はシールに加えて、靴のかかとに貼り付けるステッカー、QRコードが印刷されたキーホルダーも同時に配布している。同市高齢者支援課の長谷川直人主事は「使い分けるのではなく、全て使ってもらいたい。必ず役に立つはず」と期待を寄せる。


全国 声掛け隊や模擬訓練も

厚生労働省の認知症施策推進室によると、認知症徘徊者の行方不明防止や早期発見へ、何らかの対策を講じている自治体は、16年4月時点で全国1355市区町村に上る。これは全自治体の約8割に当たり、各地で工夫を凝らした取り組みが広がっている。

例えば、岩手県矢巾町では、ボランティアグループ「矢巾わんわんパトロール隊」が、犬の散歩中に高齢者への声掛けなどを行っている。これまでに、犬を連れて散歩中の隊員が、道に迷っていた高齢者を保護して自宅まで送り届けるなど、効果を発揮している。

京都市左京区内の南部に位置する岩倉圏域では、徘徊者が交通機関を利用し圏域を超えて移動する可能性があることから、タクシーやバス、鉄道などと連携した捜索訓練を実施している。

福岡県大牟田市では、行方不明の認知症高齢者を保護するための徘徊模擬訓練を毎年、全小学校区で地域の住民が参加し行っている。訓練には、認知症の人も参加し、声を掛けてくれた人に感謝の言葉や本人の思いを伝えるなど、認知症への理解を深めるきっかけとなっている。


4年連続の増加 昨年、不明者1万5432人

警察庁によると、認知症を原因とする行方不明者の届け出数は、16年の1年間で1万5432人で、統計を開始した12年から、4年連続で最多を更新した。

政府は15年1月、国家戦略として認知症対策に総合的に取り組む新オレンジプランを策定。その主要施策の一つに、徘徊などに対応する見守りネットワークの構築を明記し、自治体に求めている。

また厚労省は、ホームページ上に「身元不明の認知症高齢者等に関する特設サイト」を開設し、行方不明者に関する情報発信を行っている。

さらに同省は、認知症の高齢者を地域で支える認知症サポーターの養成も進めている。現在、サポーターは882万9946人(16年度末時点)に上る。

公明党はこれまで、認知症の人や家族が安心して住み続けられる街づくりへ、国家戦略と位置付けた施策の重要性を重ねて訴えてきた。各地の地方議員も、認知症サポーターの養成や認知症カフェの開設などを積極的に後押ししている。

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