e「イスラム国」3年  東南アジアでの拠点づくり防げ

  • 2017.07.06
  • 情勢/国際

公明新聞:2017年7月6日(木)付



過激派組織「イスラム国」(IS)が2014年6月29日に「国家の樹立」を宣言してから3年が過ぎた。

イラクとシリア両国にまたがる広大な地域を支配していたが、米軍主導の有志連合やロシア軍、イラク軍、シリア軍などの激しい攻撃を受け、その大半を失いつつある。

最大拠点であるイラク北部のモスルは今や、陥落寸前。ISが「首都」と称するラッカを奪還する作戦も本格化し、最高指導者のバグダディ容疑者については死亡情報さえ飛び交っている。

ISの弱体化は進んでいるが、その脅威が今後、東南アジアで広がろうとしており、警戒が必要だ。

衝撃的なのは、フィリピン南部ミンダナオ島のマラウィ市を占拠した、ISに忠誠を誓う武装勢力とフィリピン軍との戦闘が5月から勃発したことだ。戦闘は続いている。

一つの都市を過激派が1カ月以上も占拠するという事態は、東南アジアでは極めて異例である。

フィリピン軍によると、6月30日の時点で一般住民の死者は44人、軍と警官の死者は82人、武装勢力の死者は300人を超える。インドネシアやマレーシア、サウジアラビア人の遺体もあり、ISの戦闘員が流入していると見られている。

実際、イスラム教徒の多いインドネシアやマレーシアでは、ISによるインターネットを駆使した勧誘活動が活発化しているという。フィリピンは国民の9割がキリスト教徒だが、マラウィ市では逆にイスラム教徒が9割以上に達する。中東で劣勢なISが東南アジアでの拠点づくりを進めていると考えられる。何としても阻止すべきだ。

フィリピンとインドネシア、マレーシアに囲まれた海域は各国の警備が手薄で、ISが武器や戦闘員の移動に利用しているとされる。そのため3カ国は6月19日より、この海域で合同パトロールを開始した。国際社会は、これを支援すべきだろう。

また、フィリピンのドゥテルテ大統領が、米軍との共同訓練や哨戒活動は行わないとしたことで、過激派が行動しやすくなったとも指摘されている。米比関係の改善も急がなければならない。

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