e農家の「収入保険」実現
- 2017.07.10
- 情勢/解説
公明新聞:2017年7月10日(月)付
19年産から 安定経営へ安全網
農作物の価格下落にも対応
党農水部会 稲津久 部会長に聞く
農家の安定経営を支える新たなセーフティーネット(安全網)として公明党が提案してきた「収入保険制度」は、先の通常国会で法律が成立し、2019年産の農産物からスタートする運びとなった。党農林水産部会の稲津久部会長(衆院議員)に制度の意義や農家にとってのメリットを聞いた。
――収入保険制度の実現にどのような意義があるか。
稲津久部会長 自然災害による収量減のみならず、豊作に伴う農作物の価格下落など農業経営全体に関わる収入減を補う新たなセーフティーネットができることになります。農業共済など既存の補償制度の対象外となっている野菜や果樹、花き栽培もカバーします。
農業経営の大規模化や多角的な複合農業の実現など、日本農業の成長産業化を見据え、農家が安心して生産に励めるようにする制度です。
――これまでの公明党の取り組みは。
稲津 どの政党よりも先駆けて収入保険制度の創設を提案し、その実現を国会質問などで粘り強く訴えてきました。党を挙げた積年の目標であり、2010年の重点政策に掲げて以降、"一丁目一番地"の農業政策として取り組んできました。
――通常国会ではどのような議論を展開したか。
稲津 安定的な制度運営のため、農家への加入促進の取り組みを強化するよう訴えました。特に、加入要件である青色申告を実施している農家の割合が少ない点を指摘。青色申告の実施によって、農家の経営管理向上につながることを啓発するだけでなく、最大65万円の所得控除などのメリットがあることを周知するなど、政府に対して青色申告の普及に努めるよう求めました。
また、収入保険制度の保険金が支払われるまでの資金繰りに対応する「つなぎ融資」の実施など、可能な限り農家が利用しやすい仕組みになるよう主張しました。
――今後の課題は。
稲津 加入申請が始まる18年秋までに、農家一人一人に制度内容を理解してもらうことが重要です。農林水産省は、12日の京都市を皮切りに全国10カ所で地方説明会を開催します。
党としても、ネットワークの力を生かし、必要な情報を発信しながら、農家の皆さんが収入保険制度を活用しやすくなるよう力を注いでいきます。
制度の仕組み
基準収入の8割台を補償
収入保険制度は公明党の推進により、昨年策定された「農業競争力強化プログラム」で農業改革の柱の一つに位置付けられた。
品目を問わず全ての農産物が対象になり、農家の収入減が発生した際に国と農家が拠出する保険金と積立金から一定額を補てんする。
補償は、過去5年間の平均収入を基準収入として、その8割台を確保できる仕組みを設計。財源は、保険金の50%を国庫補助で、残りは農家が保険料(掛け捨て)を支払う。積立金は75%が国庫補助で残る25%を農家が積み立てる(繰り越し可)。
加入要件は青色申告を実施していること。5年以上の実績を原則とするが、1年分の実績があれば加入できるようになっており、「簡易な方式」による青色申告でも要件を満たすことにした。
なお、同じく国費が使われている農業共済や収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)などの類似制度とは、重複を避ける観点から「選択加入」となっている。