eコラム「北斗七星」
- 2017.07.18
- 情勢/社会
公明新聞:2017年7月15日(土)付
「任」という漢字の右側「壬」は、金属をたたく時に使う台を表すそうだ。上からかかる強い力や重さに耐えるので、「『たえる、になう、まかせる』の意味になった」(白川静博士の漢字の世界へ・福井県教育委員会)。<任命、任期、一任、辞任、信任>など、政治の世界では、この文字を含む言葉が飛び交う◆今日の代議制民主主義は、有権者による投票を起点にして、政治家、官僚へと政策の決定・実施を委ねる。もちろん、無条件ではない。任せた内容の結果について、政治家らに納得のいく説明責任を求める。京都大学の待鳥聡史教授は、この仕組みを「委任と責任の連鎖」と呼ぶ◆政治家は、有権者から委任された課題を着実に解決できたかどうか選挙の度に審判を受ける。しかし、託された政策を実行するだけで、政治家の役割を積極的に果たしたと手放しで喜べるだろうか◆待鳥氏は、さらに踏み込んで「政治家が相互に競争する」(「代議制民主主義」 中央公論新社)ことを求める。競い合う中身は、何が有権者に最大の利益をもたらすかだ。そうでなければ、政治が未知の政策課題に対応できなくなるという◆人類の財産ともいえる代議制民主主義は世界で空洞化が指摘され、守勢に立つ。この土台を強靱にするのは政治家しかいない。(明)