e"おもてなし"の手段に育てよう

  • 2017.07.19
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年7月19日(水)付



一般住宅の空き部屋を旅行者に有料で貸し出す「民泊」。そのルールを定めた住宅宿泊事業法(民泊新法)が先の通常国会で成立し、早ければ来年の初めにも施行される。

 

全国に約5万あるとされる民泊物件は、その大半が旅館業法に基づかず違法状態にある。新法の制定により、民泊という新しい宿泊事業に法的根拠を与え、営業基準などを定めたことは、健全な民泊事業の普及を大きく後押しすることになろう。

 

まして訪日外国人客は年々増加し、受け皿となる宿泊施設の不足は深刻化している。政府がめざす「2020年までに4000万人」の訪日客を受け入れられるかどうかは、民泊事業の成否が大きなカギを握るに違いない。

 

空き家や空き部屋が課題である地方では、遊休資産の活用と観光振興に効果が期待される。訪日客にとっても、宿泊施設がないために選択肢から外していた地域を訪れるきっかけとなり得る。

 

注目すべきは、新法論議の契機にもなった近隣住民とのトラブル防止策を明示したことだ。実際、民泊事業は住宅街の一軒家やアパートなどを利用することが多いことから、「夜中まで大勢で騒いでいる」「利用者がゴミ出しのルールを守らない」といった苦情が少なくない。

 

この点について新法は、事業者に対して民泊施設と分かる標識の掲示や利用者へのマナーの徹底などを義務付けた。義務を怠った事業者は、業務停止命令や事業廃止命令の対象となり、それでも従わない場合は、最大で6カ月以下の懲役か100万円以下の罰金が科される。

 

ここで改めて確認しておきたいことは、民泊事業は安価な宿泊施設を用意することだけが本来の目的ではないということだ。日本人の日常生活に近い環境を提供することによって、有名観光地や大型宿泊施設などでは味わえない日本の魅力を訪日客に伝える役割を持つ。これは、訪日客が民泊を選ぶ大きな理由の一つでもある。

 

新法制定を契機に悪質な事業者を排除することは当然として、民泊を新たな"おもてなし"の手段となるように育てていく姿勢を忘れないようにしたい。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ