e日欧EPA国内対策 農業生産者に寄り添う支援を

  • 2017.07.20
  • 情勢/経済

公明新聞:2017年7月20日(木)付



日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の大枠合意を受け、政府は国内の畜産農家を支援する基本方針を決定した。環太平洋連携協定(TPP)対策としてまとめた政策大綱を改定し、今秋までに具体化する。

日欧EPAは、保護貿易主義の潮流が目立つ中で、自由貿易主義の重要性を世界にアピールする意義がある。正式に発効すれば、欧州産の農産物や加工食品が国内で安く手に入るなど、消費者が受ける恩恵も少なくない。

一方で、国内の畜産農家は激しい競争にさらされる。現場からは国内農業に与える具体的な影響の試算・公表を求める声が強い。農家の不安払拭へ、施策の検討を急ぐべきではないか。政府には生産者の声を丁寧に把握し、寄り添う支援を求めたい。

畜産農家の中でも、とりわけ深刻な打撃が懸念されるのが酪農だ。

大枠合意により、乳製品はカマンベールなどのソフトチーズを中心に、低関税の輸入枠を設けて段階的に関税を引き下げ、16年目に撤廃する。

ただでさえ、生乳の生産量は全国的に減少傾向にある。現場では、乳用牛1頭当たりの乳量を増やすなど努力しているものの、農家の高齢化や後継者不足などを背景に頭数は減り続けている。

安くてブランド力のある輸入勢に負けないために、基本方針では欧州産チーズに対抗すべく、生乳の低コスト化をはじめ、品質向上とブランド化の促進を打ち出した。実際、生乳の用途として、チーズなど乳製品向けは拡大しており、需要の高まりが見込まれる。酪農家の経営安定へ向けた方向性として、おおむね評価できる。

また、農業団体の関係者は、搾乳ロボットや新技術の導入を進めて、酪農家の労働を効率化し、優良な乳用牛の頭数増につなげるよう求めている。政府には、生産性の向上という視点も重視し、具体策を検討してほしい。

基本方針では、関税が引き下げられる牛肉、豚肉の生産者に対し、赤字の補填制度を拡充する方針だ。

政府の掲げる"攻めの農業"の実現へ、農家が安心して生産できる環境の整備に全力を挙げてもらいたい。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ