e指定国立大学法人 国際競争力高める研究拠点に

  • 2017.07.21
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年7月21日(金)付



世界の有力大学に対し、日本の国立大学が肩を並べられるようになるかどうかの正念場である。

文部科学省は、世界最高水準の教育研究活動や人材育成を後押しする指定国立大学法人に、応募した7大学の中から東北大、東京大、京都大の3校を選んだ。

指定国立大学法人制度は、世界トップレベルの大学づくりをめざすもので、対象となる大学の指定は今回が初めて。私大を含む37大学を国際化や人材育成の面で財政支援する「スーパーグローバル大学創成支援事業」に続く、文科省による国際競争力強化策の一つである。

指定された大学は、研究成果を活用する企業への出資が可能になり、事業収入を得ることができる。給与基準も緩和され、著名な外国人教員を好待遇で迎えることもできるようになる。こうしたメリットは、国際社会に貢献できる研究活動の展開に役立つであろう。

指定国立法人制度が導入された背景には、基礎研究を担うべき大学の活力低下がある。実際、世界の主要科学誌に掲載された日本の論文の比率は低下し、AI(人工知能)に関する特許出願数では米中両国に大きく水をあけられている。

日本の高等教育の水準を向上させることは喫緊の課題であり、指定国立大学法人に、その突破口を開いてほしい。

今回、3大学が選ばれた理由は、「研究力」「社会との連携」「国際協働」の三つの分野で国内トップレベルにあると認められたからだ。

例えば、東北大は、東日本大震災から得られた知見を踏まえ、防災・減災の観点から世界的に価値が高い「災害科学研究」を推進し、地域社会や国際機関とも連携した明確な戦略が評価された。

今回は指定されず「指定候補」となった東京工業大、一橋大、名古屋大、大阪大をはじめ、他の国立大学は自らの強みを生かし、世界の大学と渡り合える研究活動の基盤づくりに努めてほしい。

指定国立大学法人が手本となって、日本の大学全体の教育力の底上げにつなげることができれば、将来を担う人材の育成や、日本そして世界の発展に貢献するに違いない。

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