e各種のポイントなど集約 マイナンバーカードで活用

  • 2017.07.27
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年7月27日(木)付



今秋、総務省が実証事業



総務省は、航空会社のマイレージや、地域貢献活動に参加した住民に自治体が発行するポイントなどを集約し、マイナンバーカードを使って、買い物や公共施設への利用を可能にする実証事業を始める。9月にも運用開始の予定で、消費喚起による地域経済の活性化やマイナンバーカードの普及につなげる狙いがある。準備を進める自治体の動きを追った。


商店街で買い物に使用


経済活性化へプレミアム分も検討 群馬・前橋市

群馬県前橋市は早くから、総務省による実証事業への参加を表明。今年秋の開始に向け、準備を進めてきた。

同市が検討している仕組みは、民間企業が発行するポイントと、ボランティア活動に取り組んだ市民に与えられる市独自の「地域活動ポイント」をマイナンバーカードで集約。たまったポイントは、JR前橋駅構内にある物産店で買い物に使ったり、美術館の「アーツ前橋」や「前橋文学館」の入館料の支払いに利用してもらう。これら各施設には、マイナンバーカード裏面のICチップを読み取る機器を設ける予定だ。

また、全国各地の「ふるさと納税」の返礼品を閲覧できるサイトを運営する民間企業とも連携。たまったポイントを使って、オンライン上で前橋市の特産品が購入できる仕組みも検討している。

さらに、市内10の商店街・百貨店でつくる「前橋中心商店街協同組合」が発行する商品券の購入にも使えるようにする方針だ。同協同組合の植木修理事長は「加盟店の売り上げアップにつながる取り組みになる」と期待する。

実証事業について、山本龍市長は「地域経済の活性化につながるチャンス。前橋でポイントを使ってもらうため、市独自でプレミアム(上乗せ)分も検討している。オンラインショップでは、生産量日本一のウクレレなど前橋が誇る商品をもっとアピールしていきたい」と意気込む。


推計で発行額の3割 年1200億円使われず

総務省が実証事業に取り組む背景の一つに、クレジットや携帯電話、航空の各社が発行するポイントやマイレージが十分に活用されていない現状がある。

総務省の担当者は「これらの業界で、毎年約4000億円相当のポイントやマイレージが発行されているが、少なくとも約3割、推計1200億円相当が使われていないようだ」と指摘する。

こうした中、今回の実証事業では、JCBや全日空、日本航空、NTTドコモなど十数社が協力の意向を表明。今後、協力企業は、約2億5000万人の会員に対し、実証事業への参加を促す予定だ。

現在、実証事業には前橋市のほか、宮崎県都城市や大分県豊後高田市、熊本県小国町などが参加を表明している。いずれも、ポイントを使ってオンラインショップから地元産品を購入する仕組みを検討中だ。

一方、総務省は、事業参加に必要なシステム改修の自治体側の負担を軽減するため、クラウド(インターネット上で、情報を処理したり、大量のデータを保存できる仕組み)上にポイントを管理するシステムを構築。9月中に自治体に提供する予定だ。

また、マイナンバーカードの交付が約1200万枚(7月24日現在)で、人口に占める普及率は約9%にとどまることから、実証事業を通じて、マイナンバーカードの普及につなげたい考えだ。

同省では、16年度補正予算、17年度予算において、今回の実証事業を含む、マイナンバーカード活用に向けた予算を計上。来年度以降もこうした実証事業を進めていきたい方針だ。


地域に役立つ制度に
株式会社エムズコミュニケイト社長 岡田祐子さん

自治体や民間企業のポイントサービスシステムづくりを支援する「株式会社エムズコミュニケイト」社長の岡田祐子さんに、今回の実証事業について聞いた。

民間企業は、自社の顧客満足のためにも、また、その先の再利用に結び付けるためにも、たまったポイントは使われるべきだと考えており、ポイントの交換先が増すことは望ましい。

自治体側は、ポイント交換が一度きりにならないよう、例えば、医療費の抑制につながる介護予防活動に参加した住民にポイントを与えるなど、地域の課題解決に役立つような自治体ポイント制度とする工夫が必要だろう。

住民がポイントをため、何度も交換してくれる流れができれば、地域循環型経済が活性化するだけでなく、行政コストの削減にも寄与する可能性が高く、その点でも期待できる取り組みだ。


マイナンバーカード
国民1人1人に割り当てられた12桁の社会保障と税の共通番号(マイナンバー)が記載されたカード。顔写真付きで、公的な身分証明書になる。取得は自由で、申請すれば、無料で交付される。このカードを使えば、納税や子育て、年金受給に関する行政手続きがよりスムーズになる。

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