eコラム「北斗七星」

  • 2017.07.28
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年7月28日(金)付



先生による生徒への暴言や体罰のニュースを聞くたびに思い出す随筆がある。山田詠美さんの「『良い先生』と『悪い先生』」だ(『私は変温動物』に収録)◆山田さんは小学校時代、教師を「良い先生」と「悪い先生」に分類していた。子どもが大人と同じように悩み苦しみ、大人以上に羞恥心を持っているのを知っているのが前者。子どもを傷つける言葉がどういうものであるかを知らない、言葉の選び方を知らないのが後者、と◆そして小学校2年時の「悪い先生」との出来事を記していた。その日、授業が終わり黒板ふきで書かれたものを消していた山田さんは、上の方まできれいにしようと背伸びして黒板ふきを落としてしまう。それは教壇の上で弾み辺り一面をチョークの粉で汚してしまう◆どうしようと考え込む山田さん。そんな彼女を女教師が怒鳴る。「何やってんのよ、この子は! 本当に育ちが悪いんだから」。涙ぐみながら「パパとママは本当にすてきに私を育ててくれてるのに。あなたは何もわかっていない。今、教壇を汚したのは私だけの責任なのに」と心の中で叫ぶ山田さん◆この体験を通し山田さんは「子どもは大人と同じように傷つくのである。そして、言葉は殴るよりもひどく相手を傷つけることがある」と指摘する。心したい。(六)

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