e脱石油燃料車 世界をリードするEV戦略を
- 2017.07.31
- 情勢/解説
公明新聞:2017年7月29日(土)付
地球温暖化など環境への配慮を理由として、石油製品を燃料とするガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する動きが欧州で相次いでいる。
英国は26日、2040年までに石油燃料車の販売を全面的に禁止すると発表した。6日にはフランスも同様の方針を示している。すでにドイツでは、連邦参議院で30年までに販売を禁止する決議が採択されている。
脱石油燃料車の背景には、温暖化対策の新たな枠組みである「パリ協定」の達成や、大気汚染による健康被害のリスクを軽減する目的がある。英国では、健康被害による生産性の損失が最大で年間27億ポンド(約3900億円)に上り、大気汚染に関連し約4万人が死期を早めているという。
欧州で「燃費が良い」として普及しているディーゼル車の排ガス不正問題が発覚したことも、脱石油燃料車の機運を高めていると指摘される。
こうした動きの先にあるものは何か。それは、世界の自動車市場の主役が石油燃料車から電気自動車(EV)に交代するということであろう。実際、ドイツの大手自動車メーカーは、全車種にEVを用意すると公表している。
英仏独が国を挙げて脱石油燃料車に向けた手を打ち始める中、低燃費の石油燃料車で世界をリードしてきた日本も対応を急ぎたい。
幸い、EVに使われるリチウムイオン電池については、世界市場で日本企業が優勢だ。今後は、電池の小型化や大容量化、充電速度のアップ、耐久性の向上などが課題とみられており、研究開発への支援に政府もより注力すべきではないか。
電力需要の増加にも手だてが必要だ。日本の全ての乗用車がEVに切り替わった場合、電力消費量は単純計算で1割増えるとの試算がある。
この点、再生可能エネルギーの普及を加速させたい。欧州環境庁の研究によると、EVの充電を石炭火力発電だけで賄えば、ガソリン車などよりも多くの二酸化炭素を排出することになるという。
世界の動きを注視しながら、環境、経済の両面で国際的な競争力を高める戦略が日本には求められよう。