e「燃料デブリ」確認 取り出しは焦らず、着々と
- 2017.07.31
- 情勢/解説
公明新聞:2017年7月31日(月)付
事故から6年4カ月余り、ようやく難敵の姿を捉えることができた。道のりはなお遠く険しいが、"完走"の決意を改めて固めてほしい。
東京電力が福島第1原発3号機の原子炉内で行った水中ロボット調査で、溶け落ちた核燃料(デブリ)と見られる物体が初めて確認された。
廃炉の進展に向けた重要な一歩といえよう。炉内の極めて高い放射線量にも耐えうる高性能ロボットの開発などに取り組んできた技術者、研究者や現場の作業員らの努力の賜であり、その労苦に深く頭を垂れたい。
世耕弘成経済産業相も早速、「貴重な情報が得られた」として、デブリ取り出しの方針を9月に決定する意向を表明した。30~40年かかるとされる廃炉工程が新段階に進むものと期待が高まる。
ただ、メルトダウン(炉心溶融)して圧力容器を突き抜けたデブリを取り出すという作業は、世界にも類がない、いわば未知の領域への挑戦である。リスクは計り知れない。
ここはむしろ、冷徹なまでの醒めた目で向き合う姿勢こそが、政府にも東電にも求められよう。焦りは禁物であることを強調しておきたい。
実際、大きな手掛かりを得たとはいえ、ロボットが捉えた映像はデブリの一部に過ぎない。デブリがどこに、どのように分布しているのか。設備の損傷はどの程度なのか。調査を継続し、なお不確実性に覆われている炉内の全貌に迫る必要がある。
無論、何より優先すべきは、作業員の安全確保と放射性物質の流出防止でなければならない。技術面の向上や地域社会との情報共有、内外の英知の結集なども含め、一歩一歩着実に成果を積み上げ、柔軟に対応していく「ステップ・バイ・ステップ」の手法が求められる。
注目されるのは、きょう31日、関係者を集めて福島県内で開かれる「第14回廃炉・汚染水対策福島評議会」(議長=高木陽介経済産業副大臣、公明党)の議論の行方だ。
今回の「デブリ確認」の成果をどう評価し、デブリ取り出し方針の策定や中長期ロードマップ(工程表)の改訂にどう反映させるか。
"次の一歩"につながる熱い討論を期待したい。