e特別養子縁組「6歳未満」は妥当な制限か
- 2017.08.01
- 情勢/解説
公明新聞:2017年8月1日(火)付
養護施設で暮らす子どもが、一人でも多く温かな家庭で育てられるようにしたい。
予期せぬ妊娠や経済的事情などで実の親が育てられない子と、血のつながらない親が戸籍上の親子となる「特別養子縁組」。実の親と戸籍関係が残る普通養子縁組に年齢制限がないのに対し、特別養子縁組で引き取られる子の年齢は「6歳未満」となっている。
これを引き上げるべきかどうかを検討するため、法務省などの研究会が発足した。
研究会は、対象年齢を定めた民法を所管する法務省関係者や専門家で構成される。子どもの幸福を最優先に考え、特別養子縁組の一層の拡大につながる論議を望みたい。
日本では、親による虐待などで社会的養護を必要とする子どもが約4万5000人いる。そのうち、9割が乳児院や児童養護施設で暮らす。
だが、世界的には「施設養護から家庭養護へ」の流れが強い。日本における特別養子縁組の成立件数は、2005年の305件から15年の544件と増加傾向にあるが、それでも英国の1割程度だ。
なぜ日本は遅れが目立つのか。理由の一つに「6歳未満」という年齢制限がある。厚生労働省によると、この年齢制限によって成立しなかったケースが14、15年度の2年間に46件あったという。
6歳以上になれば自我も強く、年齢が上がるほど新しい家族への適応が難しくなることは容易に想像できる。しかし外国には、子どもの年齢ではなく親子間の年齢差を基準にしているケースもある。
先に厚労省は、▽普通養子縁組が15歳以上は本人の意思を尊重しているため15歳未満に▽児童福祉法の対象となる18歳未満に―などの案を示した。議論の糸口となろう。
忘れてはならないのは、子どもと養親へのきめ細かいサポートである。諸外国の事例も研究しながら、議論を深める必要がある。
昨年、特別養子縁組に関する相談・支援を児童相談所の業務とした改正児童福祉法や、民間事業者による適切な養子縁組のあっせんを可能にする新法が成立した。
特別養子縁組を進める環境は整備されつつあり、今回の研究会の論議でさらに弾みがつくことを期待したい。