eイエメンの人道危機 世界最悪。国際社会は支援急げ
- 2017.08.03
- 情勢/国際
公明新聞:2017年8月3日(木)付
アラビア半島南西端の国、イエメンが世界最大規模の人道危機に見舞われている。国際社会は支援を急ぐべきだ。
国連傘下の国連児童基金(ユニセフ)と世界食糧計画(WFP)、世界保健機関(WHO)は先月、イエメンの国民の6割が飢えに苦しんでいると強調。国際社会に「前例にないほどの取り組みが求められている」と訴える共同声明を発表した。
同時に、イエメンでは今、ほぼ全土でコレラの感染が広がっており、その健康被害が「世界最悪」の水準に達していることにも警鐘を鳴らした。4月から7月までにコレラの感染で2000人近くが死亡、感染を疑われている人は40万人に上るというから、事態は極めて深刻である。
この危機的状況の背景には、イエメンで3年間続いている内戦がある。
サウジアラビアが支援する同国のハディ大統領側と、イランが後ろ盾となっている反政府勢力のイスラム教シーア派武装組織「フーシ」が対立する内戦は、サウジ主導の周辺アラブ諸国連合軍が2015年3月に、フーシ掃討のための空爆を開始したことで激化。これまでに1万人以上が死亡し、人口約2700万人の1割を超す300万人が難民となった。
イエメンの北部や中部で支配地域を拡大しているフーシの勢力を抑え込むため、サウジと周辺アラブ諸国は食料や医薬品などの禁輸措置も実施している。これが食料の9割を輸入に依存するイエメンの大きな痛手となっている。
各国の緊急援助を調整する目的で国連が設置した「機関間常設委員会」(IASC)は、イエメンの状況をシリアと同等の最も深刻であるとする「レベル3」に設定。国連は4月に、イエメンへの支援で総額21億ドル(約2300億円)の拠出を加盟国に要請し、日本も6200万ドル(約69億円)の支援を約束した。
しかし、7月11日の時点で3分の1しか集まっていない。国際社会は早急に支援に本腰を入れるべきである。
昨年4月から国連の仲介で和平協議も実施されたが、不調に終わった。サウジ、イラン両国と友好関係を築いている日本が橋渡しをし、和平協議を成功に導きたい。