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- 2017.08.07
- 情勢/解説
公明新聞:2017年8月7日(月)付
新たな自殺対策大綱
7月末に政府が閣議決定した新たな「自殺総合対策大綱」と、10月ごろから適用される予定の最低賃金アップについて解説する。
日本の自殺死亡率は「非常事態」。過労や生活困窮、いじめ対策を進め、26年までに自殺率を30%以上減らす。
Q 新たな自殺対策の指針が決まったと聞いた。
A 政府が7月25日に閣議決定した、「自殺総合対策大綱」のことだね。大綱は、自殺対策基本法に基づき、国や自治体などの役割を定めるもので、5年に1度、見直している。今回は2026年までに、人口10万人当たりの自殺者数である「自殺死亡率」を15年に比べて30%以上、減らす目標を掲げた。人口推計を勘案すると、自殺者は1万6000人以下となる計算だ。
Q そもそも最近は、自殺が減っているの?
A 年間の自殺者数は7年連続で減少しており、07年の初の大綱で掲げた「10年で20%減」の目標は達成した。それでも16年には2万1897人に達するなど、多くの尊い命が失われている。そのため新大綱では、「非常事態はいまだ続いている」と警鐘を鳴らしている。
確かに、日本の自殺死亡率は他の先進国と比べて高い傾向にある。英国は7.5人(13年)、米国は13.4人(14年)なのに対し、日本は18.5人(15年)に上るのが現状だ。
Q 目標達成へ、どのような対策を進めるのか。
A 新大綱は、過労や生活困窮、いじめなど「生きることの阻害要因」を減らし、自己肯定感や信頼関係といった「生きることの促進要因」を増やすことを通じて、「誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現をめざす」と基本理念に掲げた。
そのための具体的な重点施策として、長時間労働の解消に向けた監督指導の徹底や、職場でのメンタルヘルス対策、パワハラ対策を推進するほか、ひきこもりや児童虐待、性犯罪・性暴力被害者、ひとり親家庭などへの支援を充実させる。加えて、産後うつの予防強化や、性的マイノリティーに対する理解の促進もめざす。
Q 公明党の取り組みは。
A 自殺者の総数は減っても若者の自殺が減らない現状を重視し、若年層への対策強化を訴えた。その結果、「子ども・若者の自殺対策」のさらなる推進が、新たに重点施策に位置付けられた。
具体的には、24時間の全国統一ダイヤルなど子どものいじめ相談体制の充実や、学校現場で困難やストレスへの対処方法を身に付ける「SOSの出し方教育」などだ。さらに、18歳以下の自殺が夏休みなど長期休業明けに急増する傾向があることから、休業期間前後を含む見守りの強化も盛り込まれた。
最低賃金アップ
過去最高となる25円の引き上げで、時給は全国平均848円に。4年で1割以上も上昇し、非正規の処遇改善に期待。
Q 最低賃金が上がるそうだね。
A その通り。2017年度の最低賃金は全国平均で25円アップし、時給が平均848円となる見込みとなった。新たな額は10月ごろから適用される予定で、非正規労働者の処遇改善が期待されている。
国の中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)が7月25日に引き上げの目安額をまとめ、同27日に塩崎恭久厚労相(当時)に答申した。
最低賃金は、パート労働者を含む全ての働く人に適用される賃金の下限額で、都道府県ごとに時給で示されており毎年度改定される。現在の全国平均は823円。最低賃金を下回る金額しか支払わなかった企業には罰則がある。
Q 今回の引き上げ幅は大きいの?
A 全国平均25円の引き上げは16年度と並んで過去最高で、2年連続で3%の引き上げとなる。10円台の引き上げがほとんどだった過去10年間と比べると大幅な引き上げだ。この4年間で1割以上も最低賃金が上がる計算になる。
政府は昨年6月に閣議決定した「ニッポン1億総活躍プラン」で、最低賃金の毎年3%程度の引き上げを盛り込んでおり、目標として掲げる「全国平均1000円」の実現に向け、また一歩前進した形だ。
Q 引き上げ額は、全国一律なのか。
A 地域によって異なる。審議会は、所得や物価などの指標を基に都道府県をA~Dの四つに分けており、引き上げ額の目安は、A(東京、大阪など6都府県)が26円、B(京都、兵庫など11府県)が25円、C(北海道、福岡など14道県)が24円、D(青森、沖縄など16県)が22円となった。
この目安額を基に、各地の地方審議会が地域経済の実態を踏まえて引き上げ額を決める。
Q 今後の課題は。
A 賃金の引き上げは、給料を支払う側には負担になる面もあるため、経営体力が弱い傾向にある中小企業などへの配慮が不可欠だ。
6月に政府が閣議決定した経済財政運営の基本方針「骨太の方針」には、最低賃金1000円を実現するため「中小企業・小規模事業者が賃上げしやすい環境の整備を行う」と明記しており、こうした目配りが必要となる。