e高齢者のがん対策 最良の選択できる基準づくりを
- 2017.08.14
- 情勢/解説
公明新聞:2017年8月11日(金)付
高齢のがん患者にどう対応すべきか。超高齢社会と医療との関わりについて新たな論点が浮上した。
国立がん研究センターが、年齢ごとのがんの治療法について調査結果を発表した。それによると、75歳以上の高齢がん患者は、手術や抗がん剤投与などの積極的な治療を受けない割合が、他の世代に比べて高いことが分かった。
例えば、早期の大腸がんと診断された40~64歳の患者では、手術などの積極的な治療は9割以上で行われ、治療が行われなかったのは1.6%だった。ところが、75歳以上になると4.6%、85歳以上では18.1%が治療を受けていない。
医療機関側が手術や抗がん剤に患者の体力が耐えられないと判断することもあろう。一方、「治療ではなく緩和ケアを受けたい」「入院・治療で家族に負担をかけたくない」など、患者側が治療を望まないケースも、高齢者ほど多いのではないか。
ここで指摘しておきたいのは、治療すべきかどうかの判断基準が明確になっていないという点だ。
がんの治療法は、治療効果や安全性を調べる臨床研究を重ねて確立されてきたが、高齢者は臨床研究の対象から外されている。このため医療現場における治療方針は、医師の経験などから判断して決定しているのが実情だ。
そこで、医師の判断のよりどころとなる基準づくりをどう進めるか、これが問われる。
この点、近く閣議決定される予定の「第3期がん対策推進基本計画」の素案に、高齢者のがん治療に関する治療基準の策定が盛り込まれた意義は大きいといえよう。
国立がん研究センターも今年4月、高齢がん患者に対する抗がん剤治療の効果について、大規模な調査が必要との研究報告を発表している。
高齢者のがんに対する医療技術や薬の開発・研究も進める必要がある。実際、前立腺がんでは、85歳以上の患者でも耐えられる治療法が確立されている。
高齢化の進行に伴い、がん患者に占める高齢者の割合は今後も増え続けていく。治療の是非も含め、患者や医師が最良の選択をできる態勢づくりが急がれる。