e自治体への災害支援 気象専門の人材の活用に期待
- 2017.08.15
- 情勢/解説
公明新聞:2017年8月15日(火)付
気象に関する専門的な知見を自治体の防災対策にもっと役立てられないか。
豪雨や地震、火山噴火などの自然災害が相次いでいることを受け、気象庁の有識者検討会は、地域の防災力を高めるための方策について報告書を公表した。
具体的には、▽市町村ごとに過去の災害例をデータベース化▽台風などに関する情報を早期から気象庁側が自治体側と共有▽防災につながる気象情報の解説をホームページなどで住民向けに定期的に発信―などが盛り込まれている。実現可能な施策から年内にも実施していく方針だ。
中でも特筆すべきは、専門知識を有する気象庁職員の積極的な活用である。
災害が迫ると、市町村長が避難指示や勧告などを発令するが、自治体側に気象情報を分析するノウハウが乏しいため、判断に迷う場合が少なくない。実際、2015年9月の関東・東北豪雨では、堤防決壊後に避難指示が出された地域もあった。
そこで報告書では、災害発生の恐れが高まっている時に、近県の気象台職員らによる「防災対応支援チーム」を結成し、自治体に派遣・駐在させる方針を示した。気象台職員らの迅速かつ適切なアドバイスは、自治体にとって心強いものとなるだろう。
平時からの支援体制にも目を向けている。
例えば、気象予報士らを自治体に派遣し、日々の気象解説や防災マニュアルの改善指導などを行い、自治体の防災能力の向上をめざす。気象予報士の派遣については、16年度にモデル事業が実施され、自治体から高い評価を得ており、効果が期待できよう。
さらに、気象庁などのホームページやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用し、地域の災害特性などを解説していく。住民が気象への関心を高める契機としたい。
一方で、気象台の中でも多くの市町村を抱えるところは、自治体への職員派遣など十分に対応できるか不安が残る。長年、大規模な災害に見舞われていないため、防災への関心が比較的低い自治体もある。こうした現状も考慮に入れ、有効な手だてを検討してもらいたい。