e地方版ハローワーク 埼玉県の取り組みを追う

  • 2017.08.16
  • 生活/生活情報

公明新聞:2017年8月16日(水)付



自治体による無料職業紹介
企業の求人にも助言
開所4年半で約2万人が就職



国の公共職業安定所(ハローワーク)とは別に、自治体が無料で職業紹介を行う「地方版ハローワーク」が増加し、全国で621カ所(今年3月末現在)に達している。昨年8月、改正職業安定法などが施行され、自治体が無料職業紹介を実施しやすくなったことが背景にある。「地方版ハローワーク」に先行し、国と連携した職業紹介を含む就業支援を行ってきた埼玉県の取り組みを追った。


「就業支援サテライト」好評

JR武蔵浦和駅(さいたま市)から徒歩3分、駅前ビルの一角にある「ハローワーク浦和・就業支援サテライト」。明るくゆったりした空間に、さまざまな職種の求人票などが張り出されている。

同サテライトは2012年、埼玉県がハローワークの一部事務・権限を国から試験的に移管するハローワーク特区に基づき、同年10月に開設された。サテライト内には、国のハローワークと県のサービスが一体化し、同じフロア内に、若者やミドル(40~50歳代)、シニア(60歳以上)、女性など、求職者別に就職相談から紹介、生活・住宅相談まで、きめ細かい支援がワンストップ(1カ所)で受けられるようになった。

利用者数は年々増え、延べ24万1331人(17年3月末時点)が訪れ、そのうち、自ら求人に応募するなどで1万8397人が就職を決めている。

同県では、今年4月から、求職者支援とともに、企業の求人対策にも力を入れる。これまで県庁内に設けていた企業向けの相談窓口「企業人材サポートデスク」を同サテライト内に移設。「求人を出しても、なかなか人を確保できない」と悩む地元企業に産業カウンセラーなどの資格を持つ人材総合相談員を派遣。求人票の採用条件に"未経験者もパソコン操作ができれば大丈夫"など、より詳しく書いたり、効果的なPR方法などを提案する。

支援を受けた企業の一つが金属機械部品の加工などを行う株式会社タイネツ(同市)。NC旋盤オペレーターの求人票をハローワークなどに出していたが、一向に決まらなかった。同サポートデスクの相談員がアドバイスし、求人票の記載内容をより具体的な表現に改善したり、職業訓練施設への求人票の掲示などを行った結果、20代男性の入社が決まった。相談員の一人、天野恵子さんは「企業が求めている人材像を明確にすることによって、求職者とマッチングしやすくなった」と語る。

さらに、今年5月から「埼玉版ハローワーク」の事業として、同サテライト内で、県内の企業による面接会を随時開催している。大きな特徴は、面接会の参加者に履歴書の提出を求めず、普段着での参加も可能だ。今月4日時点で、延べ72社が面接会を行い、255人が参加し、8人が採用された。県就業支援課では「敷居を低くして、少しでも多くの人に参加してほしい」と話す。


移住者向け情報提供 鳥取県

厚生労働省が所管するハローワーク事業の地方移管については、全国知事会が分権改革の一環として訴えてきた。

こうした流れの中で、埼玉県が佐賀県とともに、2012年から約3年間にわたり、特区として試行。就職決定者数の増加など特区での成果を踏まえ、政府は、昨年の通常国会で職業安定法の改正などを含む第6次地方分権一括法を国会に提出し、同年5月に成立。8月から、国への届け出なしで地方版ハローワークが設置できるようになった。

今年7月に開設した鳥取県では、県内で有効求人倍率が高い西部に位置する米子、境港の県内2市に県立ハローワークを設置。また、都市部から地方に移り住む"UIJターン"を希望する人たちに、地元企業の求人情報を積極的に提供するため、東京、大阪にも同県のハローワークを新設した。

同省では、こうした動きに併せて、現在、無料職業紹介を行う自治体に対し、国のハローワークの求人・求職情報をオンラインで提供するサービスも行っている。同省では「地方版ハローワークの中には、農業や製造業など地域特有の産業に特化した職業紹介を行っているところもある。国のハローワークとともに、地方の就業支援策をさらに手厚くしていきたい」と期待を込める。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ