e性犯罪被害 早期支援の全国体制さらに
- 2017.08.21
- 情勢/解説
公明新聞:2017年8月21日(月)付
性犯罪と闘うための体制づくりが着実に進んでいる。
先月13日から性犯罪を厳罰化した改正刑法が施行され、今月3日からは性犯罪被害者の相談先として、全国共通の短縮ダイヤル「#8103」(ハートさん)の運用が始まった。電話をすると発信地を管轄する都道府県警察の相談電話につながる。
人間の尊厳をないがしろにされ、精神的、身体的な傷を負った性犯罪被害者には、早期の支援が欠かせない。
しかし、被害者はショックのあまり誰にも相談できないまま途方に暮れることも多い。全国共通ダイヤルが被害者に対する早期支援を進め、性犯罪の潜在化防止につながることを期待したい。
都道府県警察によって受付時間帯など運用は多少異なっている。20を超える警察では時間外に当直を置いて24時間対応をしており、時間内であれば臨床心理士が直接対応する所もある。
改正刑法は、以前の強姦罪を強制性交等罪に変更し、女性だけでなく男性も性犯罪の被害者に含めた。男性からの相談などこれまで以上に複雑な問題への対応も想定されるが、どうか被害者に寄り添って相談に乗ってほしい。
2016年までの5年間の刑法犯認知件数を見ると、強姦は約1000~1400件で推移しているが、被害者からの警察への通報は一部にとどまっているという。
通報もためらわれる状況の中で、相談を決意するにはさらなる困難が伴うことだろう。しかし、性犯罪から立ち直るためにも早期に支援を求めてほしい。
10年4月から、性犯罪被害者に対するワンストップ・センターとして1カ所で必要な全ての支援を提供している「性暴力救援センター・大阪」は、性暴力を「人間の尊厳」の問題であると同時に「医療」の問題ととらえ、女性の被害者に対する「救急医療」と位置付けて取り組んでいるほどだ。
性犯罪被害の苦痛は一生を狂わすほど長く続く。しかし、被害直後に適切な支援を受けると、その後の回復が大きく進むと考えられている。早期支援の体制強化としてワンストップ・センターの全国への整備も急ぐ必要がある。