e2018年 世界自然遺産へ(上)
- 2017.08.22
- 生活/生活情報
公明新聞:2017年8月22日(火)付
希望の(美しい)きょら島 奄美
生態系を守れ!
鹿児島県の奄美大島では、2018年夏の世界自然遺産登録をめざし、環境保全対策や観光客を呼び込む施策が進んでいる。今年9~10月には、同遺産の調査機関である国際自然保護連合(IUCN)の現地調査が行われる予定で、これまでの取り組みに対する評価が登録へのカギを握る。大自然の魅力にあふれ、多くの人々が憧れてやまない"きょら(美しい)島"の今を追った。
マングースを徹底駆除
クロウサギなど増える希少動物
奄美大島には、世界で最も原始的なウサギの「アマミノクロウサギ」や、瑠璃色と茶色の鮮やかな色をした鳥の「ルリカケス」などの希少動物が生息している。同遺産の登録に向けて課題となってきたのが、これら希少動物の保護だ。
1979年、ハブやネズミの駆除を目的に外来種であるマングースが放された。しかし、これが逆効果。希少動物に被害を与え、生態系を壊す原因となってしまった。当初放されたマングースは30頭程度だったが、ピーク時の2000年ごろには1万頭以上にまで繁殖したとされる。環境省の岩本千鶴自然保護官は、当時の試みの反省を踏まえ、「奄美大島ではハブが生態系の頂点。ハブは他の希少動物を襲ったりもするが、人間がそこに介入するべきではない」と話す。
同省は05年、奄美大島のマングースの完全駆除をめざし、「マングースバスターズ」を結成。駆除事業に乗り出した。現在、42人がバスターズとして活動し、島内で3万個程度のわなの設置やモニタリング調査なども実施しながら捕獲を続けている。バスターズの奮闘もあり、マングースの生息数は50頭程度まで減り、世界初の完全駆除に迫っている。
財団法人自然環境研究センターの松田維研究員は「森林の中を一日中歩いての作業は大変な労力。数の減少で捕獲が難しくなっているが、忍耐強く頑張りたい」と語る。着実に結果は表れており、クロウサギは体毛や、ふんの形跡から増加傾向がみられ、その他の希少動物も同様だという。
一方、同遺産の登録によって観光客の増加が予想されることから、奄美群島広域事務組合は今月から、「認定エコツアーガイド制度」を開始した。地元自治体が住民をエコガイドとして認定。観光客に同島の自然を案内しながら、環境保全の重要性を訴えていく取り組みだ。奄美大島エコツアーガイド連絡協議会の喜島浩介会長は「観光客にも奄美の自然を守っていく意識を持ってほしい」と期待する。
同群島は今年3月、国内最大の亜熱帯照葉樹林などを有することを理由に、国内で34番目の国立公園に指定された。国立公園という登録への前提条件が整ったことで、世界自然遺産への道がいよいよ大詰めを迎えている。
世界自然遺産
優れた景観や地形、貴重な動植物を有し、環境保全の取り組みが評価された地域が登録の対象とされ、鹿児島県の奄美大島、徳之島、沖縄県の沖縄本島北部、西表島が候補地となっている。奄美群島の喜界島、沖永良部島、与論島などは候補地外。