e欧州で相次ぐテロ "帰還戦闘員"の社会復帰も重要に
- 2017.08.23
- 情勢/解説
公明新聞:2017年8月23日(水)付
欧州が再び卑劣なテロに襲われた。
スペイン東部バルセロナの観光名所「ランブラス通り」でワゴン車が暴走、死傷者が100人を超える大惨事となった。過激派組織「イスラム国(IS)」が関与を表明している。フィンランド南西部の都市トゥルクでは、刃物を持った男が通行人を襲撃。2人が死亡、8人が負傷した。こちらもISとの関連性が疑われている。決して許すことのできない凶行だ。
テロが相次ぐ欧州では、各国が銃器や爆発物に対する取り締まりを強めている。しかし、ISはそれを逆手に取り、「爆弾がなければ車でひき殺せ」とネット上で呼び掛けている。実際、昨年以降、欧州で多発しているテロは、車を用いたものである。
入手が容易な車や刃物を使ったテロを未然に防ぐのは極めて難しい。しかも、そうしたテロが今後、ますます増えると見られている。ISの考え方に共感し、中東に渡航した欧州出身の若者が今、続々と帰還しているためである。
欧州刑事警察機構(ユーロポール)によると、欧州から約5000人がISの戦闘員になるため、シリアやイラクのIS支配地域へ渡ったという。そのうち、約750人が既に欧州各国に帰国したとされる。ユーロポールは、今後、2000人以上が帰国する可能性があると指摘する。
今回のスペインでのテロの容疑者は、北アフリカのモロッコ国籍の若者だが、モロッコもISの"帰還戦闘員"に悩まされている国である。
在モロッコ日本大使館は、ISの支配地域に渡航したモロッコ人は約1600人に上り、帰還者によるテロの可能性があると注意を喚起している。モロッコでは6月に、シリアのIS戦闘員と連絡を取りながらテロを計画していた帰還者の若者が摘発された。
テロの根を絶つには、帰還者の「脱過激化」を進める取り組みが不可欠だ。例えば、デンマークの都市オーフスでは、自治体と警察が協力し、帰還者が過激な行動に走らぬよう説得すると同時に、仕事探しなどの支援も行う「過激化予防プロジェクト」を実施している。国際社会は、こうした帰還者の社会復帰を後押ししていくことも重要だ。