e赤潮 国内有数の養殖直撃

  • 2017.08.28
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年8月25日(金)付



トラフグ(生産量日本一)など大量死
生産者、再建のめど立たず
公明議員ら 現地を調査、緊急支援へ
長崎・松浦市



伊万里湾(佐賀、長崎両県)で7月に発生した赤潮が、湾に面する長崎県松浦市の養殖漁業に深刻な被害をもたらしている。市は今月7日、友広郁洋市長を本部長とする緊急対策本部を設置し、早急な対応に乗り出している。公明党の秋野公造参院議員は19日、宮本法広県議、川下高広市議と共に同市鷹島町の新松浦漁業協同組合を訪れ、被害状況を調査した。

「これからどう生計を立てていけばよいのだろうか......」。養殖魚の死骸を前に、志水正司組合長はがっくりと肩を落とした。

松浦市や佐賀県唐津市、伊万里市が面する伊万里湾は、波が穏やかなため、トラフグやマグロなどの養殖が盛んだ。特に松浦市は、トラフグの養殖は日本一の生産量を誇る。2015年には、全国の約15%に当たる596トンが生産された。

市によると、今回の赤潮の原因は「カレニア・ミキモトイ」という有害な植物プランクトン。今年は雨が少ない上に気温が高かったため、水温が上昇し、プランクトンが大量に増殖した。

養殖場を訪れた一行に対し、市水産課の齋藤周二朗課長は今月17日現在、トラフグ約43万匹、マグロ2800匹など全体で約50万匹の養殖魚が死亡し、損失が約5億円以上に上ることを報告。同市では、たびたび赤潮が発生しているが、被害が数億円規模に上るのは1999年以来、18年ぶりだという。

同組合の浦田進参事は、現在の被害が昨年度の養殖業による売り上げ(24億7000万円)の約5分の1に当たると説明。志水組合長は赤潮被害が長期化していることから、「被害の収束が見えない。今後、さらに被害が広がる恐れがある」と表情を曇らせた。

秋野氏らはこの日、同湾内の養殖漁場3カ所を視察した。当日、同湾内では赤潮は発見されなかったが、養殖魚の死骸が確認された。養殖トラフグの生産者の石田武司さん(45)は「被害が大きく、経営が苦しい」、坂元高幸さん(45)も「この地域には意欲のある若い生産者が多い。一刻も早い支援をお願いしたい」と窮状を訴えた。秋野氏は「皆さんの声を国に届け、対応していく」と述べた。

長崎県によると、赤潮による漁業への損失については、一般的には漁業共済の特約制度によって補償されるが、病死などが多い当歳魚(1歳魚)は対象外。しかし、補助がないと経営再建が厳しく、支援を求める声は多い。

友広市長は秋野氏らに対し、市の主産業である水産業の早期復旧に向け、瀕死魚の処分や赤潮の原因究明と再発防止などへの支援を要望。秋野氏は「早急な支援を国に働き掛けていく」と約していた。

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