e凍土壁全面運用 汚染水抑制へ効果発揮を期待
- 2017.08.28
- 情勢/解説
公明新聞:2017年8月28日(月)付
願わくば想定以上の効果が出ないものか。期待を込め、注意深く見守っていきたい。
東京電力福島第1原発1~4号機の周囲約1.5キロの地中に氷の壁を築いて地下水の流入を防ぐ「凍土遮水壁」で、残る7メートルの未凍結区間を凍らせる作業が始まった。
今秋にも完了する予定で、国費約350億円を投じた汚染水対策の「切り札」は、ようやく全面運用となる。
ただ、これほど大規模な凍土壁で地下水の流入を防ぐ試みは世界にも例がない。専門家の間には遮水効果を疑問視する声もある。加えて温度や水位の調整を誤れば、凍結箇所が溶けて汚染水が外に漏れ出す可能性も否定できない。
東電はいや増し気を引き締め、まずは安全かつ安定的な運用に万全を期してほしい。
第1原発の原子炉建屋では今も、山側から流れ込む地下水が、溶けた核燃料に触れるなどして大量の汚染水を発生させている。この流れを食い止めない限り、汚染水は半永久的に増え続ける。
このため東電は、凍土壁のほか、建屋手前の井戸で地下水をくみ上げる「サブドレン」や、山側でくみ上げて海に流す「地下水バイパス」などの手法も織り交ぜ、汚染水の発生を抑えてきた。1日約400トンあった汚染水は、今は140トンにまで減っている。
この成果に立って、凍土壁の全面凍結後は1日100トン以下に減らすことを目標としている。東電はこれら三つの対策のデータを詳細に解析しながら、最も適切で効果的な運用に努めることが肝要だ。
汚染水を多核種除去設備で処理した後も残るトリチウムの扱いをめぐる問題もある。
処理済みの水は既に100万トンを超え、敷地内は1000基に上る保管タンクで溢れ返っている。7月には東電の川村隆会長が「海洋放出」を唐突に示唆し、風評被害に苦しむ漁業関係者から猛反発を受けるという騒ぎもあった。
汚染水対策に限らず、廃炉作業は地元の信頼と理解なくして成り立たない。上から目線の対応では混乱を招き、却って作業を遅らせるだけだ。
凍土壁の全面運用を前にした今、東電はこの一点を改めて確認し、情報公開と丁寧な説明を徹底することを約束してもらいたい。