e2030年の目標 SDGs達成へ

  • 2017.08.29
  • 情勢/国際

公明新聞:2017年8月29日(火)付



企業、自治体の行動促せ
基本法制定、予算確保など政府は体制構築進めよ
慶應義塾大学大学院 蟹江憲史教授



――先月、国連で持続可能な開発目標(SDGs)に関するハイレベル政治フォーラムが開かれた。

蟹江憲史教授 日本政府主催のレセプションで、世界中で流行した「PPAP」を使い、ピコ太郎と外相らがSDGsを紹介したことはユニークで話題性もあった。

また、フォーラムの前にシンクタンクなどが発表したレポートでは、日本の取り組み状況は157カ国中11位というが、数字に表れるものと表れないものがあるから、11位という順位に惑わされるべきではない。

2020年の東京五輪・パラリンピックは世界が注目する。日本がSDGsにどう取り組んでいるのかも見られる。その意味で、東京五輪を一つの契機として、リーダーシップを発揮していくべきだ。

――SDGsの達成には自治体や企業の役割も重要だ。

蟹江 SDGsは、国や地域のコンテクスト(文脈)に合わせて実施するのが特徴だ。自治体や企業も、それぞれの優先課題に合わせて取り組むべきだろう。社会的な課題の解決に関心を持つ企業は多い。SDGsのコンテクストで考えることで、ビジネスチャンスや雇用創出ができ、女性の活躍が促進されるという先例が増えれば、もっと広がる。

沖縄県読谷村で、村長らとSDGsをツールにした村づくりで意見を交わした。漁業が盛んな村だが、このまま地球温暖化が進めばサンゴが白化し、小さな魚も減る。そうなると大きな魚も来なくなるので、漁業が成り立たなくなる。だから、環境を守りながら漁業を持続させることが必要だ。その上で、米軍基地に頼らない基幹産業を興していく。地元住民にとっていい形で、かつ長期的視野で開発しようという考え方はSDGs的だ。そうした取り組みの後押しが重要だ。

―国内の取り組みを促すために政治に求められることは。

蟹江 SDGsは、2030年につくるべき社会を構想し、そのためのアクションを考えるやり方だ。未来へのステップとして次の一歩を考えることと、目先の課題を乗り越えるための方法を考えるのとでは、先の見え方も進め方も違ってくる。例えば、女性の活躍推進のために女性雇用者数の増加だけを求めるのではなく、女性が活躍している社会を考えて、その時に必要なものにつながることを動かすわけである。

今までのガバナンスの仕組みとは違う新しい理念を含んでいるので、従来とは違う仕組みが必要だ。例えば、基本法を制定すれば、省庁をまたぐタスクチームができ、未来に向けた予算を確保する根拠にもなる。

政府が率先して取り組むことで、企業や自治体が積極的に取り組みたくなるような体制をめざすべきだ。公明党は理念と重なる部分が多いと思うので、ぜひリーダーシップを発揮して、SDGsを推進するための実質的な仕組みや制度構築に取り組んでもらいたい。

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