eコラム「北斗七星」

  • 2017.09.01
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年9月1日(金)付



「美しい話だな」と思う新聞記事に時々出合う。今年初め目にした埼玉新聞の記事がそうだった。高1女子が、道路に散乱する古紙を自発的に回収し、警察署から感謝状が贈られたという内容だった◆自転車通学の彼女は夕方、通りかかった県道で大量に散乱する新聞紙などの古紙を見つける。一度は通り過ぎるが、「何もしていない自分につらくなった」と引き返す◆だが、古紙は自転車の前籠に収まるような量でなく、離れたコンビニまで行き、ごみ袋を買って戻る。再び拾い集める彼女。その姿を見た人が警察署に連絡し、署員が駆け付けると3袋計10キロの古紙が回収されていた◆署からの感謝状に彼女は「当たり前と思って拾った」「周りの事をもっと見られる1年にしたい」とほほ笑んだ。見て見ぬ振りをするのではなく、関わり合ってゆく社会◆『老いてこそ上機嫌』(田辺聖子著)に「<合ったり>という精神」が出てくる。助け合ったり、支え合ったり励まし合ったり、という精神。それが、人間の脳をもっと拓かせ、気持ちを大きくさせていくのではないか、と◆著者は言う。震災を知るたびに人間はやさしくなっていった、そういうふうに後世の人たちが言ってくれるようになれば、私たちの人生は生きやすい。防災の日。豊かな共助の心を育みたい。(六)

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