e2030年の目標 SDGs達成へ
- 2017.09.01
- 情勢/解説
公明新聞:2017年9月1日(金)付
政策評価する"切り口"
貧困問題の取り組み不可欠
高い視点から最善策議論
認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 大西連理事長
――日本政府の持続可能な開発目標(SDGs)の取り組みをどう評価するか。
大西連理事長 政府の「SDGs推進円卓会議」に参加しているが、SDGsの達成に向けて、NPOやNGO、行政、有識者、企業、国際機関など、幅広い関係者の声が直接政府に届けられる場があることは大きい。
課題を言えば、既存の政策を評価する切り口として、SDGsをもっと活用してほしい。なぜ達成しなければならないかを政府、政治家、われわれも含めて、もっと深く理解し、達成に向けた具体的な政策目標を作るというアプローチで臨むべきだ。
――具体的な課題で言うと。
大西 例えば、貧困率半減というが、数値目標までは踏み込めていない。2015年時点の国内の貧困率は15.6%なので、それを半減するとなれば北欧並みの7.8%に下げなければならない。それには所得の格差をなくし、所得を全体的に上げる必要がある。最低賃金の引き上げや無年金、低年金者への手当てなど政策の総動員だ。
貧困の解決のために、労働、住まい、ジェンダーなどいろいろな課題とリンクしながら取り組むことがSDGsの特徴と言える。SDGsを国家目標に反映させることは重要で、その視点から政策を組み替えることが重要になる。
――より効果的に政策を組み替えるには。
大西 グランドルール(大目標)のようなSDGs的概念を導入することは重要だ。ビジネス分野では、企業が事業を起こす時に現地の人を搾取しないとか、環境に配慮するという考え方がある程度共有されつつある。そういうものにSDGsの理念や概念がなれば良い。
――具体例を挙げると。
大西 例えば、大学も含めて全ての学費を今すぐ無料にすることは難しい。しかし、将来的にめざそうという目標の下であれば、貧困家庭の子が進学できるよう支援するとか、今は予算の制約から優先順位を付けるが、いずれは誰もが行けるようにするという道筋をはっきり示すことだ。
単年度予算の日本では限界もあるが、理想に向けたメルクマール(指標)も明確になるので、SDGsの理念に基づく政策の組み立て方は良いと思う。大きな目標に向けて今やるべき最善の策は何が良いかが議論できるからだ。
――SDGsの機運をもっと高めるには。
大西 持続可能な開発目標という和訳も含めて言葉が分かりづらい。地域で「子ども食堂」を運営する"おばちゃん"がSDGsと言われてもピンとこないだろう。しかし、そうした人たちと共感することが大事だ。子ども食堂で「地域の余った食材を使うことはSDGsになる」といった結び付きができれば浸透しやすくなるかもしれない。