e熊本地震1年5カ月 "医療の空洞化"に懸念

  • 2017.09.14
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年9月14日(木)付



秋野氏ら 関係者の苦悩受け止め
熊本・益城町



熊本県益城町では今、復興に伴う県道拡幅事業で立ち退き対象となった医療機関のほとんどが同じ地域での再建にメドが立たず、町外移転を余儀なくされるなど"医療の空洞化"が懸念されている。公明党の秋野公造参院議員は先ごろ、城下広作、氷室雄一郎、前田憲秀の各県議、吉村建文町議と共に同町の医療法人永田会・東熊本病院を訪れ、永田壮一理事長(上益城郡医師会長)から窮状を聞いた。=熊本地震取材班

「今は内科を中心とした外来診療のみを行っているが患者も3分の1ほどに減り、毎月1500万円近くの赤字が出ている」

昨年4月の熊本地震で4階建ての病棟が傾くなどして全壊の判定を受けた東熊本病院。永田理事長は、入院患者を受け入れられない状況下で診療を続けていく苦悩を赤裸々に語った。

同病院は、町内唯一の急性期病院として、24時間体制で救急患者や重症患者を受け入れてきた"地域医療の要"。被災直後から早期再建をめざし、病棟横の駐車場に免震構造を持つ新病棟の建設を計画。今年3月から工事に着手する予定だったという。


県道拡幅で町外へ病院移転も


そんな中、昨年末に県と町が、同病院前の県道熊本高森線を2車線から4車線に拡幅する計画(同町広崎から寺迫までの約3.5キロ)を発表。これにより町内の17医療機関のうち、同病院を含む11医療機関の建物や駐車場が立ち退き対象となり、新病院の建て替え計画は事実上の白紙に。

「完成までに10年近くかかる県道拡幅事業が地域医療へ及ぼす影響は大きい」と、永田理事長は危機感を隠さない。これまで上益城郡医師会として県に4車線化計画の反対意見書を提出。「県は病院周辺の区画整理を最優先して再建を後押しするというが、赤字経営が続く中で、いつまでも待てない。高齢で後継ぎがいない院長は閉院を考えざるを得ない」と語気を強める。

永田理事長は、悩み抜いた末、隣接する熊本市東区での新病院建設をすでに決めたという。とはいえ、今後も新病院で同町の仮設住宅に身を寄せる高齢者などへの在宅医療の提供や、地域包括ケアの構築に貢献していく考えだ。

こうした医療機関が抱える窮状にじっくりと耳を傾ける秋野氏ら。「益城町の"医療の空洞化"を招かないためにも、県や町と連携しながら医療再建を進めなければ」と、永田理事長らの苦悩を受け止めた。

きょう熊本地震から1年5カ月。復旧・復興へと歩みを進める被災地では、再建に向けた新たな課題が浮き彫りになっている。

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