e高齢ドライバー 進む免許返納。その先の支援を

  • 2017.09.15
  • 生活/生活情報

公明新聞:2017年9月15日(金)付



高齢者が運転免許証を自主返納する動きが広がりを見せている。

75歳以上の高齢ドライバーへの認知機能検査を強化した改正道路交通法の施行から、12日で半年を迎えた。5月末までに約43万人が検査を受け、認知症の恐れがあると判定された人は1万人を超えた。このうち約1000人が免許を自主返納している。

検査を受けていない人も含めると、今年1~7月期の免許自主返納は14万件に上る。昨年1年間の約16万件に迫る勢いだ。高齢ドライバーによる事故が後を絶たない中、免許返納に対する関心の高まりを示すものといえよう。

しかし、改めて指摘しておきたいのは、高齢ドライバーにとって免許返納は決して容易な決断ではないということだ。先に触れたように、認知症の恐れがあると判定された人の返納率が1割にとどまっていることが、それを如実に物語っている。

理由の一つは、やはり「生活の足」を失うことへの不安であろう。実際、免許保有者数を基にした都道府県別の1~7月の免許返納率を見ると、東京や大阪などの都市部に比べ地方ほど低い傾向にある。

少子高齢化に伴い、電車やバスなどの公共交通機関が地方ほど減少傾向にあることを考えれば、免許返納をためらうことは理解できる。

対策に乗り出している地域は多い。例えば乗り合いタクシーの導入だ。地域住民がNPOを立ち上げ、1キロメートル130円で高齢者を送迎している徳島県美馬市のケースのように、有料運送事業を実施している自治体や地域が増えている。免許を返納しても日常生活への影響をできるだけ抑えられるよう知恵を絞りたい。

気になる調査もある。国立長寿医療研究センターによると、65歳以上を(1)運転を続けている人(2)もともと運転しない人(3)運転をやめた人―に分けて2年間調べた結果、運転をやめた人が要介護状態になる可能性は、続けている人の約8倍に達した。運転を通した脳の活性化や交流の広がりが、要介護や認知症を予防しているという。

免許を返納した高齢者の健康管理や認知症予防をどうサポートするかについても、今後の課題であろう。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ