eコラム「北斗七星」

  • 2017.09.19
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年9月19日(火)付



ノーベル文学賞作家のヘミングウェイ。小説『老人と海』の著者として日本でも馴染み深いが、亡くなった後、相当量の未発表原稿が見つかり、ファンを驚かせたことは、案外知られていない◆死後、発表されただけでも小説、短編集など合わせて10編。作品を書き上げると、まず銀行の貸金庫に入れ、一定期間を経てから取り出し推敲。気に入らなければ再び貸金庫へ。その作品が遺稿となった。外山滋比古著『異本論』(ちくま文庫)にある◆「書いた直後はまだ創作の興奮が続いていて、よくものが見えるようになっていない。平静に返ってからでないと」。外山氏はある作家の言葉を借り、ヘミングウェイの姿勢に好感を寄せる。それにしても、一体いつになったら平静に返るのか。北朝鮮がまたも北海道上空を飛び越える弾道ミサイルを発射した◆国連安全保障理事会が追加制裁決議を全会一致で採択してからわずか3日後の愚挙である。安保理は16日(日本時間)の緊急会合で「強く非難する」との報道声明を発表。加えて一連の制裁の完全かつ迅速な履行を加盟国に求めた。当然だろう◆「悪とは何か。後味の悪いことだ」とヘミングウェイ。ミサイル発射という、非日常の常態化を防ぐには国際社会の団結が必要だ。愚挙が後味を一層悪くすることを知らねばなるまい。(田)

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