eロヒンギャへの迫害  世界が直面する重大課題に

  • 2017.09.21
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年9月21日(木)付



特定の集団を虐殺するなどして居住地域から強制的に排除する「民族浄化」。ミャンマーで少数派のイスラム教を信仰する「ロヒンギャ」への迫害が、まさにその様相を呈している。国際社会は対応を急ぐべきだ。

国際移住機関(IMO)は19日、ミャンマーの隣国バングラデシュに避難したロヒンギャの人たちが42万人を超えると発表。国連のグテレス事務総長は、ロヒンギャへの迫害を、北朝鮮の核・ミサイル問題と並ぶ「世界が直面する重大課題」と位置付けた。

日本も支援に乗り出している。河野太郎外相は、ロヒンギャの避難民を対象にした緊急人道支援として、最大400万ドル(約4億5000万円)の拠出を表明した。

ロヒンギャはミャンマー西部ラカイン州を中心に約100万人いると見られるが、国民の大半を占める仏教徒から差別され、政府も自国民と認めず、国籍を与えていない。

8月25日に「アラカン・ロヒンギャ救世軍」と自称する武装集団が政府軍を襲撃したことを機に迫害が激化した。政府軍と治安部隊は、無関係なロヒンギャの一般住民も弾圧。正体不明の民兵まで便乗し、暴行や住居への放火を繰り返した。

バングラデシュ政府によると、難民となって逃れてきたロヒンギャの人たちの大半は妊婦と乳飲み子を抱えた女性だというから、極めて深刻な人道危機である。

ミャンマー政権の実質的トップであるアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相は苦しい立場にある。治安や国境管理の指揮権は政府軍にあり、迫害をやめさせようにもスー・チー氏ができることは少ない上に、歴史的に国民のロヒンギャへの嫌悪感は強い。

スー・チー氏は昨年8月、ロヒンギャ問題の解決に向け、軍を説得する一助とするため、アナン元国連事務総長を委員長とする諮問委員会を発足させた。同委員会は1年間の検討の末、ロヒンギャの地位向上に向けた国籍法の見直しや仏教徒との共存、貧困問題を解消するための就労支援などを提言した。

スー・チー氏は、この提言の実現に尽力すると表明している。国際社会はまず、この動きを後押しすべきだ。

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