e初の水俣条約会議
- 2017.10.03
- 情勢/解説
公明新聞:2017年10月3日(火)付
国際的な水銀規制、日本が主導を
9月24日から30日までスイスのジュネーブで開かれていた「水銀に関する水俣条約」(水俣条約)の初の締約国会議は、締約国が4年に1度、水銀の削減状況を報告することなどを決定し、閉幕した。現在83カ国に上る批准国は、条約順守のための具体策に早急に乗り出すべきだ。
会議の中でひときわ注目を浴びたのは、熊本県水俣市の胎児性水俣病患者である坂本しのぶさんの訴えだった。
「私は母のおなかの中で水俣病になりました。多くの人が今も水俣病で苦しんでいます。皆さんに水銀問題にちゃんと取り組んでほしい」
工場排水中のメチル水銀に汚染された魚介類を母親が食べ、胎盤を通して水俣病を発症した坂本さん。介助なしでは歩くことができず、言葉もうまく話せないが、自らの姿を通して水銀被害の深刻さを伝えた姿に、150を超える国と地域からの参加者は心を動かされたに違いない。
水俣条約は、水銀と水銀を含んだ蛍光灯や電池などの製品の製造や輸出入を2020年までに原則禁止し、水銀鉱山からの採掘もできなくする。条約の名称は日本政府の提案によるものだ。前文に「水俣病を重要な教訓とする」と明記されている。水銀規制を日本主導で進めたい。
しかし現状は厳しい。特に深刻なのは、南米やアフリカの途上国の小規模金採掘(ASGM)での水銀利用である。水銀は金と結び付く。水銀を塗った板に金を含む土砂を流した後、加熱すると水銀が気化、金だけを取り出せる。
国連環境計画(UNEP)によると、人為的に大気中へ排出されている水銀は年間約2000トン。半数以上が途上国でのASGMでの排出で、推計約1500万人ものASGMの作業員が水銀にさらされているという。気化した水銀を吸い込むと中毒症状を起こし、命を失う危険もある。
会議では、ASGMによる水銀の削減でも合意した。日本は水銀の排出を減らす技術を持つだけに、技術面で途上国を支援したい。
公明党は水俣病で苦しむ被害者の救済に一貫して取り組み、水俣病被害者救済特別措置法の成立などに尽力してきた。今後も水銀対策に全力を挙げていく決意だ。