e対談 「捨てる食品」なくそう
- 2017.10.24
- 情勢/解説
公明新聞:2017年10月24日(火)付
食品ロス問題専門家 井出留美さん
公明党食品ロス削減推進プロジェクトチーム座長、参院議員竹谷 とし子さん
国連が定める10月16日の「世界食料デー」にちなみ、日本では10月が「世界食料デー」月間です。本紙で連載されたコラム「なくそう食品ロス」の筆者、井出留美さんと公明党食品ロス削減推進プロジェクトチーム(PT)座長の竹谷とし子参院議員に、食品ロス削減について語り合ってもらいました。
竹谷 井出さんには、昨年、党東京都本部女性局(松葉多美子局長=都議)が各地で開催した講演会の講師として、大変お世話になりました。
井出 ありがとうございます。議員の皆さんや地方行政、中央省庁、民間企業、NPOなど、それぞれが強みを生かし、結束することが食品ロスの削減につながると考えています。
竹谷 現状をどう見ていますか?
井出 今年4月に政府が公表した2014年度の食品ロス推計値は621万トンです。2年前の642万トン、前年の632万トンから少しずつ減っています。
竹谷 1人1日お茶わん約1杯分の量に当たりますね。
井出 621万トンの内訳は、コンビニやスーパー、食品メーカー、レストランなど事業者から出たものが339万トン。家庭からが282万トンです。私は講演でいつも、「消費者自身が、責任の一端を担っている」と強調しています。例えば、お店で棚の奥に手を伸ばし、新しい商品を買えば、古いものが残り、結局お店が捨てることにつながります。生活者である私たちが購買行動を変えていくことが必要だと思います。
竹谷 多くの方にまず知っていただくことが大切ですね。自治体が連携している「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」では「食べきり」運動を推進していますが、公明党の地方議員が全国で協議会参加の後押しをしています。各地でロス削減の動きが進んでいますが、特徴的な取り組みはありますか。
井出 京都市が興味深い実験をしています。飲食店で幹事が「今日は食べきりましょう」と声掛けをした場合と、しなかった場合で食べ残しの量がどう変わるかを調査したものです。結果、声掛けをした方が明らかに食べ残しが減っていたそうです。また、スーパーで、少し曲がったり、形が悪い野菜に「味は変わらないので買ってください」と、POP(店頭表示)を付けるか、付けないかで比較する実験でも、表示した方が10%ほどロスが減りました。
竹谷 小さな取り組みで、効果があるんですね。
井出 これを日本中に広げたら、かなり違ってくると思います。同市としても、ごみを減らすために食品ロスをいかに減らすか、考えています。
竹谷 食品を捨てることは「もったいない」だけでなく、家計にもマイナスですね。
年間11兆円超もの損失 井出
井出 京都市の調査では、4人家族で年間6万円分の食料を捨てています。そのごみを処理するのに5000円かかります。これを日本全国に換算すると年間で11.1兆円を失っていることになります。
竹谷 大きな損失ですね。食品ロスは家計にマイナスなだけでなく、生産者や事業者にとっては利益を直接減少させ、さらに行政の廃棄物処理費の負担になっています。ですから、食品ロスを削減することは、みんなにとってのプラスにつながります。公明党は全ての人に関係する大切な問題として、取り組んでいます。
井出 米国には食料品の寄付に当たっての免責制度や税制優遇などがあり、余剰食品の活用が進んでいます。日本でも法整備を進めてもらいたいです。
竹谷 党PTとして、議員立法の骨子案をまとめました。国や自治体、事業者、消費者への責務や努力義務を定めているほか、寄付された食品の安全性に関わる法的責任のあり方について、調査・研究することも盛り込みました。また、未利用食品を必要とする人に届ける「フードバンク」の支援も入っています。
井出 私が以前勤務していた、米国に本社を置く食品企業では、積極的に寄付を行っていました。
貧困解消へ国民運動に 竹谷
竹谷 改善傾向にあるとはいえ、7人に1人の子どもが貧困状態にあります。食べ物を捨てている一方で、なくて困っている人がいます。食品ロスを削減するとともに、食べ物に困っている人たちをなくすため、国民運動として取り組みを続けていきます。
井出 ともどもに頑張っていきましょう!