e南海トラフ臨時情報 "命守る行動"にどうつなげるか

  • 2017.10.31
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年10月31日(火)付



南海トラフ巨大地震に備えた新たな対策が、あす11月1日からスタートする。これをどう住民の命を守る行動につなげていくか、検討を進めたい。

気象庁は26日、南海トラフ地震につながる恐れがある前震や異常現象などを観測し、大規模地震発生の可能性が高まっていると判断した場合、「南海トラフ地震関連情報」を臨時発信すると発表した。

臨時情報が発信されるケースは、想定震源域内で▽マグニチュード(M)7以上の地震が発生▽M6以上または震度5弱以上の地震が発生し、岩盤の動きを捉える「ひずみ計」で変化を観測▽複数のひずみ計で変化を観測―した場合の主に三つ。

有識者でつくる評価検討会が分析し、最短2時間で巨大地震発生の可能性などの検討結果を発信する。

発信される内容は「今回の地震から1週間程度、大規模な地震の発生可能性が平常時に比べて高まっていると考えられる」などとなる見込み。これを受けて政府は、被害想定地域の住民に避難場所・経路や備蓄の確認、家具の固定などを呼び掛ける。

今回の対策は、政府の中央防災会議が9月末に取りまとめた報告書を受け、これまでの予知を前提とした情報の発表方法を気象庁が大きく転換したものだ。いつ起きるか分からない地震に関する情報としては、現時点ではこれが精いっぱいであろう。

まずは、自治体や企業、住民が今回の対策を十分に理解することが欠かせない。その上で、発信される情報をどう活用し、具体的な行動につなげるかが今後の課題となる。

とりわけ重要なのが住民避難だ。現段階では自治体ごとの判断に委ねられている。内閣府は静岡、高知両県をモデル地区に指定して検討を進める考えだが、他の自治体でも検討を急ぐべきだ。避難に時間や人手を要する高齢者や障がい者への対策も忘れてはならない。

中央防災会議の報告書が、早めに安全な場所に避難する「事前避難」の検討を提案したことは参考になろう。事前避難は市民生活に大きな影響があるだけに、地域内の合意形成を丁寧に進め、万一の事態に備えたい。

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