eコラム「北斗七星」
- 2017.11.06
- 情勢/社会
公明新聞:2017年11月4日(土)付
何カ月分も段ボール箱にしまい込んでいるケースもあるというから驚きだ。医師から処方された薬を大量に飲み残してしまう「残薬」が大きな問題になっている。特に高齢者は生活習慣病などの慢性疾患に加え、高齢者特有の病気もあって何種類もの薬を長期間処方される場合が多い。どうしても残薬は多くなりがちだ◆埼玉県薬剤師会が高齢者ら150人の自宅を訪問した2014年の調査では、全員に残薬があった。また日本薬剤師会の調査(07年)によれば、75歳以上に限っても全国で年間約475億円の残薬があると推計される◆薬の飲み残しは医療費の無駄遣いになるだけでなく、患者の健康も害する。処方通りに服用していないために症状が回復しないのを、医師は「これでは効果がない」と判断し、より強い薬に変えるといった危険があるためだ◆こうした残薬を防ぐ役割も担うのが、昨年4月に始まった「かかりつけ薬剤師」。患者が自分の担当薬剤師を1人選び、重複した薬の有無や飲み合わせの可否など、薬については全てをその薬剤師に継続して管理してもらう仕組みだ◆必要があれば自宅を訪問して薬を整理してくれたり、24時間いつでも電話で相談に乗ってくれる"薬のパートナー"の普及で、高齢者の服薬の安全・適正化が進むことを期待したい。(翼)