e要支援者の避難  日頃からの名簿の活用が重要に

  • 2017.11.09
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年11月9日(木)付



「避難警告が聞こえない」「目が見えない中、1人で逃げるのは無理」―。これらは、2011年の東日本大震災の被害に遭った障がい者のリアルな声だ。

災害時の避難に支援が必要な「要支援者」への手だてをどう確保しておくか。これは防災対策の重要な柱である。

全国の市区町村では現在、「要支援者」を名簿化する作業が進んでいる。

総務省消防庁の調査結果によると、名簿を作成済みの市区町村は6月1日時点で全体の93.8%に達した。昨年4月1日時点より9.7ポイント増えており、来年3月には99.1%まで達する見込みだ。要支援者の安全・安心を守る基盤が整いつつあることを、まずは評価したい。

東日本大震災では、65歳以上の高齢者が犠牲者の約6割を占めた。障がい者の死亡率は被災住民全体の約2倍に上る。この教訓を踏まえ、13年の災害対策基本法の改正で、市区町村に要支援者名簿の作成が義務付けられた。

名簿には氏名や年齢、住所、支援を必要とする理由などが記載されている。災害時、行政はこれらの情報を自主防災組織などに伝え、要支援者の救援に役立てる。

一方、名簿を有効活用する上で課題もある。

例えば、平時は要支援者本人の同意を得ない限り、行政は外部に名簿情報を提供することができない。だが、要支援者だからこそ、地域で連携し、事前に避難方法を想定しておくことが求められる。日頃の防災訓練などにも名簿を生かせないだろうか。

注目したい事例がある。福岡県東峰村では、今年7月の九州北部豪雨の際、要支援者の避難が円滑に行われた。これは、普段から名簿情報を基に要支援者を手助けする「サポーター」を設定し、避難訓練の中でサポーターによる避難支援や危険箇所の確認などを行っていたことが大きい。

自治体としては、本人の同意がなくても名簿の情報を活用できるよう、条例を制定することも必要であろう。個人情報の扱いなど難しい面はあるが、自治体で名簿の活用法を話し合い、要支援者ごとの避難計画の策定につなげてほしい。地域全体の防災力も高まるはずだ。

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