e誰もが輝ける社会築く
- 2017.11.27
- 政治/国会
公明新聞:2017年11月26日(日)付
山口代表、井上幹事長の代表質問から
公明党の山口那津男代表と井上義久幹事長は21、22の両日、衆参両院の本会議で安倍晋三首相の所信表明演説に対する代表質問を行いました。質問では、誰もが輝ける社会の構築へ、教育費の負担軽減を訴えるとともに、後継者不足に悩む中小企業支援策として事業承継税制の拡充を主張。介護・認知症対策や防災・減災などへの取り組みも強化するよう求めました。公明党の主張のポイントと、識者・関係者の反響を紹介します。
教育費の負担軽減
幼児や私立高の無償化進め、奨学金の給付額を拡大せよ
山口代表と井上幹事長は、家庭の経済的な事情に関係なく希望すれば誰もが質の高い教育を受けられるよう、幼児教育から大学までの大胆な「教育費の無償化」の実現を訴えました。
井上幹事長は、0歳から5歳までの全ての幼児を対象に無償化を」と主張。私立高校授業料では、既に無償化されている公立高校との格差是正へ、「年収590万円未満の世帯を対象に実質無償化を実現すべき」と迫りました。安倍首相は、私立高無償化を「検討している」と明言。幼児教育や大学など高等教育の無償化については、「12月上旬に政策パッケージを取りまとめる」と述べました。
また井上幹事長は、今年度から導入された卒業後の所得に応じて奨学金の返還額が変わる「所得連動変換型奨学金」の既卒者への適用も求めました。
一方、山口代表は、公明党が長年訴えてきた「給付型奨学金」が今年度から先行実施されていることに触れ、来年度からの本格実施に万全を期すよう要請。奨学金の対象者や給付額の拡充など経済的な負担軽減策をさらに進めるよう訴えたほか、多子世帯などにも配慮した制度設計を検討するよう提案しました。
中小企業対策
事業承継 税制で強く支援。
家計所得増やす賃上げを
山口代表は、中小・小規模事業者の経営者の高齢化が進んでいることに言及。今後10年間に経営者の引退が見込まれる中小企業の約半数に当たる127万社超で後継者が未定とされ、放置すれば廃業が急増し、日本経済に深刻な影響を及ぼしかねないとの現状に触れ、事業承継に伴う贈与税・相続税の納税猶予の要件緩和などに向け、事業承継税制の抜本的な拡充を迫りました。
安倍首相は「今後編成する補正予算も活用し、切れ目のない(承継)支援策を講じる」と述べ、事業承継税制に関して「思い切った拡充を検討していく」と答弁しました。
また、山口代表は「何より重要なのは、家計所得を増やす、さらなる賃上げだ」と指摘。「特に、中小企業の賃上げへ向け、所得拡大促進税制の拡充などの支援強化を」と強く求めました。
井上幹事長は、経済成長のけん引力となる情報通信技術(ICT)を活用できる人材を育成し、日本が持つ潜在力を引き出す必要性を指摘。中小企業における設備投資の促進についても「必要な予算や税制改正を早急にやるべきだ」と訴えました。
社会保障
「若年性認知症」の取組みも
受動喫煙防止の強化迫る。
がん予防で井上幹事長は、「受動喫煙防止対策が鍵になる。より厳しい実効性ある制度の構築を」と要請。治療と仕事の両立に向けて、病気休業中に受け取れる傷病手当金制度の改善や、がんと診断された時からの緩和ケア充実を求めました。
安倍首相は「傷病手当金制度見直しの検討を含む両立支援や、医療者に対する緩和ケア研修の普及などを通じて、がん対策をさらに推進する」と答えました。
山口代表は、介護人材が25年に約38万人不足するとの試算に触れ、「より一層の処遇改善を進めるべきだ」と訴えました。
また、認知症が疑われる人を医師らがサポートする「認知症初期集中支援チーム」について、18年度に予定される全市町村での開設に向け万全な支援策を講じるべきだと強く主張。65歳未満の現役世代が発症する「若年性認知症」対策などの課題にも踏み込むよう迫りました。
復興、防災・減災
東北を「観光先進地」へ。
災害に備え交付金拡充
東日本大震災の発災から6年8カ月。被災地の産業、生業の再生は着実に進んでいるものの、"風評被害"は根強く、いまだ多くの課題が残されたままです。
井上幹事長は「東北の地方創生、経済活性化の起爆剤こそ『東北観光復興』」と力説。風評被害対策の強化とともに、「観光先進地・東北」へ政府の後押しを求めました。石井啓一国土交通相(公明党)は、「20年の東京五輪・パラリンピック大会の機会も活用しながら取り組みを強化したい」と応じました。
防災・減災施策について井上幹事長は、想定を超える被害が相次いだ最近の自然災害に言及し、地方自治体が道路や橋の老朽化対策などを進める「防災・安全交付金」の拡充を主張しました。
山口代表は「女性は防災の主体的な担い手」と指摘し、各自治体における防災会議での女性の割合増加などを着実に進めるよう訴えました。
外交政策
日中韓で首脳会談を早く
核廃絶へ橋渡し役果たせ。
山口代表は、国連で7月に核兵器禁止条約が採択され、これに貢献した「核兵器廃絶国際キャンペーン」がノーベル平和賞を受賞することを歓迎しました。
一方で、同条約採択の過程で核保有国と非保有国との間の溝が深まったとの指摘を踏まえ、「日本が橋渡し役となって双方の信頼関係の構築を図りながら、具体的かつ現実的なアプローチを積み重ねることが極めて重要だ」と主張しました。
また、中韓両国との関係については、延期となっている日本での日中韓首脳会談の早期開催や、首脳同士の相互訪問を通じ、関係改善をさらに進めるよう迫りました。
北朝鮮問題について山口代表と井上幹事長はいずれも、国連安保理決議に基づく一連の制裁決議の完全履行など、実効性を高める必要性を強調。核・弾道ミサイル、拉致などの問題解決に全力を尽くすべきと訴えました。
論戦の反響
実態をよく研究した質問内容
東京大学大学総合教育研究センター教授 小林雅之氏
長年、教育負担の軽減を強く訴えてきた公明党らしい、実態をよく研究した質問内容でした。
実際、公明党が実現を主導してきた「給付型奨学金」について、給付額や対象枠の充実を求めた点は同感です。特に、進学を促進するには給付額の増額と入学時一時金の対象者の拡充を優先すべきです。
また、井上幹事長が主張した「所得連動返還型奨学金」の既卒者への適用は、大胆な提言で評価しています。ただ、多額の予算が必要になるので、政治の力で乗り越えてもらいたい。
所得連動型の支援内容は所得のみで判断されるため、多子や介護が必要な家族の存在など家庭の背景は考慮されません。この点、山口代表が指摘した多子世帯などへの配慮は、今後の課題を的確に捉えており感心しました。
「教育無償化」は、国際人権規約でも掲げられており"国際的な約束"です。しかし、各種世論調査で税金を使った無償化に否定的な意見も見受けられ、国民の幅広い合意形成へ政治の議論の深化が求められます。
現場の声 すぐ届けてくれた
全国商店街振興組合連合会理事長 坪井明治氏
商店街は、地域コミュニティーの拠点として、地域経済や雇用に重要な役割を果たしています。
そんな中、今、大きな課題なのが、経営者の高齢化に伴う後継者探しが難航しており、廃業する店が増えてきていることです。
今回の代表質問では、先般、公明党に対して私たちが申し入れた、経営の引き継ぎを支援する事業承継税制の要件を見直して、相続税や贈与税の負担軽減を求めることが盛り込まれていました。現場の声をすぐに国政に届けていただき、感謝したいと思います。
個人事業主の事業用資産にかかる相続税などについても、軽減措置をお願いしたい。
国内経済は、緩やかな回復基調が続いています。商店街や中小の小売り商業者の発展が、地域の繁栄と、住民にとって、より良い暮らしにつながると確信しています。
公明党には、生活者目線の国民政党として、商店街や中小の小売り商業者にまで、景気回復の実感が十分行き届くよう、さらなる施策の推進をお願いしたい。