eEU輸入規制緩和
- 2017.12.12
- 情勢/解説
公明新聞:2017年12月12日(火)付
「福島産」風評払拭 アジアにも
欧州連合(EU)が東京電力福島第1原発事故後に課していた日本食品の輸入規制が緩和された。
「『福島産』の安全性が認識された証しで、風評払拭へ追い風となる」(内堀雅雄・福島県知事)ことは間違いない。率直に評価、歓迎したい。
今回、規制が緩和されたのは、福島県産米を含む10県の農水産品の一部または全部。放射性物質に関わる検査証明書の添付が不要となり、煩雑な手続きが省けるほか、コスト改善も期待できる。
EUの行政機関である欧州委員会は、来年以降のさらなる規制緩和も示唆している。政府は引き続き、積極的に外交攻勢をかけてもらいたい。
それにも増して重要なのは、日本食品の大口の輸出先であるアジアの国・地域との交渉だろう。日本食品の最大輸出先である香港をはじめ、多くの国・地域は原発事故直後から敷いてきた厳しい食品輸入規制を今も続けている。
香港は福島、茨城など5県の野菜・果物の輸入を全面停止し、食肉や水産物には検査証明書の添付を義務づけたまま。中国、韓国、台湾、シンガポールなども、5~10都県の全食品または一部食品の輸入停止を解いていない。
これらの国・地域との交渉が難しいのは、地理的に日本に近く、そのために原発事故への反応が必要以上に敏感に見えることだ。
東京大学と福島大学が今年2月に行った共同意識調査でも、「福島産」への抵抗感は欧米よりアジアで強いことを浮き彫りにしている。台湾では8割強、韓国、中国でも7割弱もの市民が「福島県産農産物は不安」と回答している。
こうした現状に照らせば、アジア圏での輸入規制緩和を進める鍵は、相手国の「世論」にあることは明らかだろう。政府・各県と各業界、市民団体などが一体となった総力戦の外交交渉が求められる。
そのためにも欠かせないのが日本国内の風評払拭だ。先の東京大・福島大共同調査を見ても、国内では今も3人に1人が「福島県産農産物への不安感」を示し、5人に1人が「福島県産は避けている」。
「隗より始めよ」である。国内での風評払拭なくして、輸入規制の緩和・撤廃はあり得ぬことを自覚したい。