eコラム「座標軸」
- 2017.12.18
- 情勢/社会
公明新聞:2017年12月17日(日)付
諺も、時とともに違った使い方をされることがある。例えば「情けは人の為ならず」。近年は、「人に情けをかけて助けてやることは、結局はその人のためにならない」と誤解している人が半数近くいる(文化庁調査)◆「無縁社会」が叫ばれ、人間関係が希薄になりがちな現代の世相を反映しているとも言われる。本来は「人に情けをかけておくと、巡り巡って結局は自分のためになる」という意味だ◆実際、人に寛容になることは、私たちの脳を幸せにする変化を引き起こすというスイス・チューリッヒ大学の研究報告がある。利他の行動が幸福度につながる関係性が指摘され、興味深い◆豊かな人間のつながりこそ社会へ利益を生み出す「資本」となる。「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」と呼ばれる考え方だ。資本の蓄積が不十分な社会は衰退に向かうという◆政府は先月、2020年東京五輪・パラリンピックに向けて、全ての人に優しい街づくりをめざす「共生社会ホストタウン」構想を示し、自治体が名乗りを挙げつつある。バリアフリーの構築に取り組む中で、支え合う意識を醸成する契機としたい。人に寛容であろうとすることは、自分が幸せを感じる社会なのだから。