e2018年度税制改正 中小企業、暮らし守る
- 2017.12.18
- 情勢/経済
公明新聞:2017年12月17日(日)付
公明の主張大きく反映
自民、公明の与党両党は14日、2018年度税制改正大綱を決定しました。焦点だった所得税改革では、公明党の強い主張を受けて負担増となる会社員の給与収入を「850万円超」とすることで決着。中小企業の世代交代を円滑に進めるための事業承継税制も大胆に見直すなど、公明党の訴えが大きく反映されています。主な項目のポイントと、関係者から寄せられた評価の声を紹介します。
事業承継
株式の相続税を全額猶予
10年間で集中支援 廃業増に歯止めかける
中小企業の後継者不足による廃業増加に歯止めをかけるため、公明党は事業承継税制の抜本的な拡充を訴えてきました。今回の改正では、高齢化する経営者の引退が集中すると見込まれる今後10年間、税制の優遇措置を拡大することによって集中的に支援し、円滑な世代交代を後押しします。
具体的には、中小企業の株式を受け継いだ場合の相続税の猶予割合を、現行の80%から100%に拡大。後継者の負担を実質ゼロにします。また、納税猶予を続けるための条件として、現在は5年間で平均8割の雇用維持が必要とされていますが、達成できなければ全額納付しなければなりません。これが事業を継ぐ上で二の足を踏む要因の一つとなっており、この要件を緩和します。
さらに、納税猶予の対象範囲を拡大します。例えば経営者の父親だけでなく、母親からも株式を受け継いだり、複数の子どもが相続する場合も猶予できるように。このほか、承継後の納税負担の軽減も図ります。事業の引き継ぎ後に会社を譲渡・解散する場合、現行では引き継いだ時点の株価に基づいて納付額を計算していますが、猶予期間中に株価が下がる可能性もあるため、譲渡・解散時の株価で税額を再計算する仕組みを導入します。
当会の提案に沿い歓迎
日本税理士会連合会会長 神津信一氏
事業承継税制の大幅拡充では、当会の要望が採用されており高く評価します。一般社団法人等を利用した租税回避の防止措置は、政府税調での当会の指摘が端緒であり、こうした行為には引き続き意見表明していきます。
給与所得控除等から基礎控除への振り替えは当会の考えと一致しますが、基礎控除が消失する仕組みは、その法的性格を踏まえ慎重な議論が必要です。
このほか特別徴収税額通知(特別徴収義務者用)へのマイナンバー記載の見直し等、当会建議に沿った見直しが多く、歓迎します。
法人税減税
賃上げ、設備投資を促進
積極的に人材育成後押し
来年度から3年間、企業の賃上げや設備投資の拡大を促すための法人税減税を実施します。
大企業については、前年度比3%以上賃上げし、一定基準の設備投資を行った場合、賃上げ分の15%を法人税額から差し引けるようにします。これに加え、一定の人材投資を行った場合、5%上乗せした計20%を法人税額から差し引けるようにします。このほか、革新的な情報関連投資の税制優遇措置とも組み合わせると、企業の実質的な法人税負担は20%程度にまで下がります。
一方、中小企業は設備投資の要件は設けず、前年度比1.5%以上の賃上げをした場合、賃上げ分の15%を法人税額から差し引けるようにします。さらに2.5%以上の賃上げと積極的に人材投資を行った場合には、10%を上乗せした25%を差し引けるようにします。
経済の好循環加速につながる
税理士法人山田&パートナーズ役員 髙橋健太郎氏
企業全体で見れば、賃上げの機運は高まっています。しかし、中小企業は恒久的な人件費増につながる賃上げに、どうしても二の足を踏みがちなのが実情です。
与党税制改正大綱に盛り込まれた新たな法人税の優遇措置は、特に中小企業にとって活用しやすい制度設計になっていると評価できます。
中小企業が賃上げを決断する際、その背中を押してくれるインセンティブ(動機付け)となるものであり、「成長と分配の好循環」が一段と加速することを期待しています。
観光振興
免税拡充で訪日消費促す
出入国の円滑化など環境整備へ新税も創設
18年7月から訪日外国人観光客向けの消費税の免税措置が拡充されます。これまでは家電製品や洋服などの「一般物品」と、食品や化粧品などの「消耗品」をそれぞれ5000円以上購入することが免税の条件であり、旅行者から「分かりにくい」との声が強く寄せられていました。そこで、合算で5000円以上あれば免税されるようにします。計50万円以下が対象です。利便性を高めることで訪日客の消費意欲を喚起します。
一方、日本からの出国に課税する「国際観光旅客税」が創設されます。19年1月7日以降、日本人、外国人に関係なく1人1回の出国につき1000円が航空券代などに上乗せされます。2歳未満の幼児などは対象外です。観光立国の実現に向けた基盤強化のため、出入国手続きの円滑化や日本の魅力発信、地域観光資源の整備などに充てます。
地方への効果波及にも期待
一般社団法人・日本旅行業協会理事長 志村格氏
これまでの免税制度は、外国人から見ると、ストッキングなど「一般物品」と「消耗品」の区別が分かりにくい商品もあり、不便な面もありました。今回、合算が認められたことでさらに買い物がしやすくなり、消費拡大につながることは間違いありません。地方都市にも効果が波及し、免税店が増えることを期待しています。
一方、国際観光旅客税の使い道は、課税される日本人出国者も納得感を得られるようにすることが重要です。観光立国を力強く推進する公明党に頑張ってもらいたい。
所得税改革
増税対象は給与850万円超
中間層に配慮 子育て、介護世帯は除外
今回の所得税改革は、多様な働き方に対応するため、全納税者に適用される基礎控除を10万円増やす一方で、会社員向けの給与所得控除は一律10万円減額し、控除額の上限も220万円から195万円に引き下げました。20年1月から実施します。
この結果、給与収入が850万円を超える会社員は増税となりますが、自営業やフリーランスで働く人は減税となります。ただ、公明党の強い主張を反映し、給与収入850万円超でも22歳以下の子どもや介護が必要な家族がいる会社員(約200万人)は、増税の対象とはなりません。
当初、控除の見直しで増税となる給与収入の線引きは「800万円超」でしたが、公明党が中間層に配慮するよう強く求めて「850万円超」で決着し、増税対象を絞り込みました。