eコラム「北斗七星」
- 2017.12.22
- 情勢/社会
公明新聞:2017年12月22日(金)付
「この冬、もっと高い自己ベストへ」。まるで冬季五輪選手のようだ。塾・予備校の「合格ラインをぶっちぎれ」「合格へつづく冬にする」冬期講習のキャッチである。受験生は年末年始も気が抜けない◆特に中学3年生の高校受験は、人生の第一ハードルといえるだろう。中学時代の最後を志望校合格で飾れたら大きな自信になる。だが、うまくいかない受験生だっている。いじめや不登校でそこまでたどり着けそうにない子も忘れてはならない◆"漫画の神様"と称される手塚治虫は、子どもたちを「未来人」と呼んだ。彼は少年時代、いじめられっ子だった。そのコンプレックスを仕事の原動力とし、『鉄腕アトム』『火の鳥』『ジャングル大帝』など数々の名作を生み出したという。随筆集『ガラスの地球を救え』(光文社知恵の森文庫)にある◆いじめられっ子が漫画家として大成できたカギは何か。彼は母親や小学校の担任教師ら大人の励ましを強調する。だから自身も「未来人」を温かく見守った。「ひとりひとりの子どもたちの、内部に眠っている宝のような何かに届く大人の眼差し」で◆きょうは一年で最も夜が長く昼が短い「冬至」。これを境に日がだんだん長くなるので、冬が去り、春が来る意の「一陽来復」とも。全ての子に等しく、やがて春は必ず訪れる。(東)