e農産物のブランド保護 海外でも品種登録の促進を

  • 2017.12.23
  • 情勢/解説

公明新聞:2017年12月23日(土)付



日本の農産物のブランド価値を高め"攻めの農業"を後押ししたい。

政府は21日、環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が発効した場合の経済効果について、国内総生産(GDP)を実質で約13兆円押し上げるとの試算を公表した。

自由貿易のメリットが伝わる数字だが、関税の削減・撤廃により輸入品の価格が安くなることで、国内産業、とりわけ農業に及ぼす影響が懸念される。政府は、対策に万全を期してほしい。

特に、守りから攻めに転じるための取り組みが重要となる。例えば日本の農産物は、その品質や安全性が海外で高い評価を得ている。こうした"日本ブランド"を最大限に生かした輸出振興策が求められよう。

指摘しておきたいのは、国内で開発された農産物が、海外で無断で栽培、販売される例が相次いでいることだ。

昨年は農林水産省所管の研究所が開発したブドウの「シャインマスカット」が、今年も栃木県が開発したイチゴの「とちおとめ」が、いずれも海外で勝手に栽培や品種交配されたことが確認された。看過できない事態である。

防止策の一つとして、海外における品種登録の促進を挙げたい。

日本には、新たな品種を開発した場合に、種苗法に基づく品種登録により、国内で独占的に販売できる権利である「育成者権」を開発者が取得できる制度がある。

また、同様の品種登録制度を義務付けた「植物の新品種の保護に関する国際条約」があり、同条約の加盟国で品種登録すれば、無断栽培や販売を防ぐことができる。

問題は、農家が海外で品種登録する負担が大きいため、実際に手続きを行う農家が少ないことだ。

この点、2018年度予算案に「植物品種等海外流出防止総合対策事業」として、海外での品種登録にかかる費用の補助に加え、手続きに必要な手順を分かりやすくまとめたマニュアルの作成などが盛り込まれた意義は大きい。

国内農産物の国際競争力の強化は、経済の一層の成長にとって必要不可欠である。

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