eコラム「座標軸」
- 2017.12.25
- 情勢/社会
公明新聞:2017年12月24日(日)付
今年も残り一週間となった。「年の瀬も押し迫った」というところだ。年の瀬の「瀬」とは、川の瀬のこと。国土交通省の「河川用語集~川のことば」によると「流れが速く浅い場所を瀬、緩やかで深いところを淵」。川の瀬の流れの速さに似て、時の流れの速さを感じさせる「年の瀬」は、まさに一年で最後の最も忙しい時期▼また、井原西鶴が「日本永代蔵」に「借銭の淵を渡りつけて、幾度か年の瀬越をしたる人」(角川文庫)と記したように、ツケ払いが当たり前の江戸時代は、暮れの支払いを精算しないと年が越せなかった。その切羽詰まった姿は、急流に身を流されぬよう川の瀬を渡る姿に重ねて見えたようだ。要は「今年のことは、今年のうちに」という戒め▼幸い返済に追われる身ではないが、やり残したことは数多ある。特に読書。あれも読もうこれも読もうと"積ん読"状態になったままの真新しい本が何冊も残っている。だが、ものは考えようか。丹羽宇一郎「死ぬほど読書」(幻冬舎新書)によれば「締切の効用」もある。作家などの物書きは「締切を意識することで集中力が生まれる」として、読書も「いかに集中するか」と▼一年のラストスパートを悔いなく過ごし、新しい年を迎えたい。