eコラム「北斗七星」
- 2018.01.09
- 情勢/社会
公明新聞:2018年1月1日(月)付
今年は、日本が近代国家への扉を開いた明治維新から150年。その象徴的な出来事が江戸城の無血開城である。立役者となった西郷隆盛と勝海舟が相まみえたのは、互いに満幅の敬意を抱いた初対面から4年後のことだった◆会談を前に、勝は西郷に手紙を送った。「無偏無党、王道堂々たり...」。無私の心で国の難局を打開する王道を歩もうと。城を引き渡せとの要求に、徳川方の事情も酌めと応じる勝。西郷が、自分の一身にかけて引き受けるとこれをのんで談判は決し、「最も見事な歴史場面」(海音寺潮五郎『江戸開城』)となった◆「政治家の秘訣は何もない。ただ『正心誠意』の四文字ばかりだ」(勝)。「己を利する者は私、民を利する者は公なり」(西郷)。今年の干支は「戊戌」だが、愛犬を連れて上野公園に立つ西郷さんの銅像も、名聞名利を捨てて兎狩りをする飾りのない姿を表しているらしい◆戊戌の「戊」は草木の繁茂、「戌」は枯れを意味するという。新たな"芽生え"を成長させるのか、枯れさせてしまうのか。今年はその分かれ目とも捉えられる◆千変万化の社会、混迷を深める時代だからこそ、西郷と勝が示したような政治の王道が、ますます重みを増し、光を放つ。われらは「大衆とともに」との不滅の立党精神を胸に、新たな一歩を踏み出そう。(祐)