e地方銀行 創意工夫で新たな商機呼び込め
- 2018.01.17
- 情勢/解説
公明新聞:2018年1月17日(水)付
金融機関に対する検査・監督について、金融庁が昨年12月に発表した新たな基本方針に関心が集まっている。
最大の柱は、銀行などに不良債権処理を迫ってきた「金融検査マニュアル」を2018年度末に廃止することだ。
同マニュアルについては、融資に当たり不動産などの資産ばかりを重視する"担保至上主義"を招き、銀行の主体的かつ機動的な対応を阻害していたとの指摘もあっただけに、今回の新たな方針をまずは評価したい。
今後、銀行に問われるのは、企業の将来性や収益性にも着目した柔軟な融資対応ではないか。低金利政策の影響で、ただでさえ銀行自身の収益力が落ち込んでいる。企業を積極的にバックアップすることで、新たな資金需要を生み出す姿勢が求められよう。
この点、地方銀行で注目すべき動きがある。
例えば、広島銀行(広島市)は、企業などに融資する際、従来から重視される売り上げなどの財務面に加え、事業内容や成長可能性などを考慮する事業性評価を行い、経営改善支援を実施している。
企業の現状と課題を顧客と共有し、効果的な販売促進策を提案するなど商機拡大に貢献。同行のリポートによると、15年度の支援実績は2646社に上り、うち1948社で経営が改善した。金融庁の新たな方針は、こうした地銀の創意工夫を後押しするものと言えよう。
金融庁が毎年実施している企業向け調査でも、収益性の改善により努めている地銀ほど経営上の課題をよく聞いてくれることが明らかになっている。
地域活性化という視点も忘れてはなるまい。
北洋銀行(札幌市)は、外国人観光客が増える観光地・洞爺湖地域で、地域経済の底上げを図ろうと、自治体や地元の信用金庫とともに、宿泊業を核とした新たな事業の可能性を探る枠組みを立ち上げた。企業ではなく、地域に融資するという発想は、将来の新たな貸出先の開拓につながるであろう。
日本経済の再生が正念場を迎える中、地域経済の振興に果たす地方銀行の役割が大きいことを重ねて強調しておきたい。