e難民認定厳格化 排除生まぬよう慎重な運用を
- 2018.01.22
- 情勢/解説
公明新聞:2018年1月22日(月)付
真に保護が必要な人たちまで締め出してしまうことにならないか。慎重かつ柔軟な運用を求めたい。
日本での就労を目的にした難民申請が急増していることを背景に、法務省が難民認定制度の厳格化に踏み切った。
本来の審査に先立って書面審査を行い、この段階で就労目的の申請など明らかに難民に該当しない申請者を振り落とす。就労を認めず、直ちに強制退去の措置も進める。
申請者の就労と在留を一律に認めてきた従来の制度からの大幅な転換で、法務省は就労目的の「偽装難民」を追い出し、本来救済すべき人たちの審査手続きを速められると説明している。
ただ、申請者を1枚の書類だけでふるいにかけ、手早く「偽装」と決めつけていいものか。「漏れ」が生じ、保護すべき人まで排除してしまう恐れはないのか。申請の当事者ならずとも、懸念しないわけにはいかない。
早い話、難民の中には、紛争や迫害から逃れるため身一つで日本に渡ってきた人が少なくない。そうした人を「書類の不備」を理由に難民と認めず母国に送還すれば、命に関わる事態も招きかねない。
それでなくとも、日本の難民認定基準は欧米に比べて厳格に過ぎ、認定率の低さも際立っている。
例えば、昨年は申請者が過去最高の1万7000人に達したと見られるが、認定数はわずか10人。毎年数万人単位で受け入れている欧米先進国との"開き"は歴然だ。そうした中での今回の措置を国際社会はどう見るか。かねて指摘されてきた「難民鎖国」との批判が再燃しかねない。
さらにもう一点。就労目的の難民申請が増えている背景に、外国人労働者の受け入れ制度の不備があることも忘れてはなるまい。
人手不足が深刻化する中、外国人労働者は今や100万人を超える。だが、大半は技能実習生や留学生で、多くの制約をかけられている。長時間労働や低賃金など過酷な環境にある者も少なくない。
就労目的の偽装難民を減らすには、こうした外国人労働者の受け入れや就労環境の改善も欠かせないはずだ。均衡の取れた制度設計へ、政府全体で取り組んでもらいたい。