eスマートドラッグ 副作用や依存症の危険周知せよ
- 2018.01.24
- 情勢/解説
公明新聞:2018年1月24日(水)付
新たな薬物乱用被害を防ぎたい。
厚生労働省は2月にも、「脳の機能を高める」と標榜し、インターネットなどを通じて個人輸入できる海外の医薬品「スマートドラッグ」の規制に乗り出す。
対象となるのは抗てんかん薬や注意欠陥多動性障がい(ADHD)の治療薬などに使われる計27品目。これまで個人使用を目的とした輸入が可能だったが、今後は医師の処方箋や指示書がなければ輸入できなくなる。
なぜスマートドラッグを規制するのか。治療という本来の目的から外れ、若者を中心に勉強や仕事の効率を上げようとして使われるケースが問題視されているからだ。
とりわけ受験生らによる乱用が強く懸念されている。「集中力を高める」「頭がスッキリする」といった宣伝文句につられて購入する例が増えているという。
実際、消費生活センターには「子どもが記憶力や集中力が上がるという薬をネットで見つけて飲んでいるが、安全か心配」との声が寄せられている。中には、親が子どもにスマートドラッグを探すよう勧めていたケースまである。
規制対象となる医薬品の多くは脳機能に直接作用するため、医師や薬剤師が関与せず安易に使用すると健康被害につながる恐れが高い。倦怠感や吐き気などの副作用で生活に支障を来したり、依存症の被害が報告されている。
さらに強い薬物や危険ドラッグ、麻薬の乱用へ誘導するゲートウエードラッグ(入門薬)となる恐れもある。
医薬品の個人輸入については厚労省が規制対象としていなければ、自己使用と認められる数量の範囲内に限り、医師の処方箋や指示書は必要ない。この点、スマートドラッグを規制対象に加えるとの厚労省の方針は、被害拡大を防ぐ上で妥当な措置といえよう。
併せて、若者や保護者らに対し、その危険性に関する啓発や相談体制を強化すべきである。
厚労省によると、規制される27品目以外にもスマートドラッグとみられる医薬品が複数ある。健康被害や乱用の懸念があると判断した時点で即座に規制対象に加える体制も求められよう。