e井上幹事長の衆院代表質問(要旨)
- 2018.01.26
- 情勢/解説
公明新聞:2018年1月26日(金)付
働き方改革
長時間労働の是正急げ
このたびの草津白根山の噴火により、訓練中に亡くなられた自衛官の方に謹んで哀悼の意を表するとともに、被害に遭われた方々に対し、心よりお見舞いを申し上げます。
政府においては、引き続き、取り残された人がいないか確認に全力を挙げるとともに、今後の火山活動や雪崩に対する監視警戒態勢を強化し、二次被害が起きないよう、万全を尽くすことを強く要請します。
安倍晋三首相は、今国会を「働き方改革国会」と位置付け、長時間労働や不合理な待遇差の是正などに取り組み、誰もがその能力を存分に発揮できる抜本的な大改革に挑戦すると、強い決意を述べられました。
少子高齢化が進み、労働人口が急速に減少しているわが国にあって、日本経済再生に向けた最大のチャレンジは「働き方改革」にあると思います。
長時間労働の是正をはじめ、子育てや介護など家庭の事情に応じた多様な「働き方」の実現は、日本の潜在力を掘り起こす大きなチャンスでもあります。
そのためには、社会保障を「全世代型」へと転換し、高齢者はもとより、子育てや介護との両立など、現役世代への支援を一層、充実させることが不可欠です。
さらに、正規・非正規間の待遇格差の是正やリカレント(学び直し)教育の充実など、一人一人が持てる能力を十分に発揮できるよう、あらゆる人に光を当てた「人への投資」が求められます。
今こそ、働く人の立場や視点に立った改革を大胆に進め、日本経済のさらなる「成長と分配の好循環」をより確実なものとし、活力ある日本の未来を切り開こうではありませんか。
今年3月、東日本大震災から7年を迎えます。
復興は着実に進んでいますが、被災地では、いまだ約8万人の方々が避難生活を余儀なくされ、約4万人の方々が仮設住宅での暮らしを強いられています。
一方で、風化は確実に進み、風評被害も続いています。私たち公明党は、被災者一人一人が当たり前の日常生活を取り戻し、人間としての「心の復興」、「人間の復興」を成し遂げるまで、被災者に寄り添い、風化と風評被害という「二つの風」と闘い続けていくことをお誓い申し上げます。
以下、具体的に質問します。
時間外労働に罰則付き上限規制を設けることなど「長時間労働の是正」や、不合理な待遇差の解消をめざす同一労働同一賃金といった働き方改革の実現に向け、今国会での法改正に政府・与党を挙げて、全力で取り組まなければなりません。
教員の長時間勤務の実態も危機的状況にあり、看過することはできません。
昨年、公明党は教員の働き方改革検討プロジェクトチームを立ち上げ、長時間勤務を是正するための教職員定数の拡充や学校現場における業務の適正化などの提言を行っています。
それを受けて、来年度予算案で、教員に代わり部活指導や大会への引率に当たる「部活動指導員」の配置費用の補助など、教員の働き方改革を前に進める施策が盛り込まれています。
今後、勤務時間の上限を示したガイドラインの策定や、教員の勤務実態を十分に反映した教職調整額の見直しを含む処遇のあり方などについて検討を行うなど、教員の働き方改革をさらに進めるべきです。
子育て優先社会
幼児教育の無償化 対象は丁寧な検討必要 「寡婦控除」の適用拡大を
児童手当や妊婦健診の公費助成など、公明党が提案し、実現してきた子育て支援策は数多くあります。
2006年に公明党は、「子どもが幸せな社会は、みんなが幸せな社会」との考え方に基づき、子育てを社会全体で支える「チャイルドファースト社会」をめざし、党独自の政策提言「少子社会トータルプラン」を発表しています。
現在、政府・与党を挙げて取り組んでいる「幼児教育の無償化」や「待機児童の解消」「給付型奨学金の創設」などは、公明党がこの政策提言を基に、これまで10年以上にわたって実現を訴え続けてきた政策です。
「子育てにかかる経済的負担の軽減」や「働きながら子育てできる環境の整備」など、子育てを社会全体で支える政策の実現は、「少子高齢化を克服する道」にも通じると私たちは考えています。
また、公明党は、「人への投資が未来を開く」との考え方に立ち、経済的な事情に関係なく、希望すれば誰もが必要な教育を受けられる社会をめざしています。
政府は昨年末、閣議決定した「新しい経済政策パッケージ」において、3歳から5歳児までの全ての幼稚園、保育所、認定こども園の費用を無償化することを決定しました。
対象範囲については、さらに障がい福祉サービスや認可外保育施設、預かり保育も支援の対象とするなど、現場の実態を踏まえた丁寧な検討が求められます。
0歳から2歳児については、保育の受け皿整備や保育士の待遇改善など、待機児童解消への取り組みと併せ、着実に無償化を進めるべきです。
政策パッケージには、公明党が訴えてきた私立高校授業料の実質無償化も盛り込まれ、年収590万円未満の世帯を対象に実現することが決まりました。
政府は安定的な財源の確保に努め、確実に実施するよう求めます。
また、経済的な事情によって、大学などへの進学を諦めずに済むよう、18年度から本格的に実施される返済の必要のない給付型奨学金について、多子世帯や中所得世帯にも十分に配慮した給付額・対象人数に拡充するとともに、授業料減免についても大幅に拡大すべきです。
未婚のひとり親世帯への支援
子育て世帯の中でも、ひとり親世帯は特に厳しい状況に置かれています。
厚生労働省の調査によれば、母子世帯の収入は、11年に行った前回調査から改善してはいるものの、依然として、児童がいる世帯全体の収入に対し、半分にも満たない状況です。
また、未婚のひとり親世帯の場合は、より厳しい現実があります。例えば、所得税や住民税の「寡婦控除」の対象は、配偶者との死別や離婚したひとり親世帯のみで、未婚のひとり親世帯は対象外です。このため、税負担はもとより、それに基づき計算される保育料などの負担も重くなっています。
公明党は、これまでも寡婦控除の適用拡大を粘り強く訴え、地方議会でも寡婦控除の「みなし適用」の実現に取り組んできました。
18年度の与党税制改正大綱では、公明党の主張を反映し、未婚のひとり親世帯への税制上の対応について、19年度改正で検討し結論を得ることになっていますが、未婚のひとり親世帯も寡婦控除の対象とすべきです。
また、離婚後の養育費の不払いも深刻です。離婚した父親から養育費を受け取っている母子世帯は4人に1人を下回っており、改善に向け、早急に取り組むべきです。
貧困世帯、中でも、とりわけ厳しい状況にあるひとり親世帯の貧困の連鎖を断ち切るために、より良い条件での就職・転職を可能とする学び直しや子どもの学習支援、社会保障の強化など、「トランポリン型」セーフティーネット(安全網)を充実すべきです。
医療的ケア児
子育てや教育の現場では、痰の吸引や人工呼吸器の装着が必要であったり、チューブによる栄養補給などが日常的に欠かせないなど、医療的ケアを必要とする子どもが増えています。
こうした「医療的ケア児」は、全国に1万7000人いるとされています。こうした子どもたちが安心して学び、生活できるよう、学校での支援体制や在宅支援を早期に充実すべきです。
財政健全化について質問します。
少子高齢化を克服するため、社会保障制度に来年10月に引き上げる予定の消費税財源を活用し、高齢者も子育て世帯も安心できる「全世代型」の社会保障制度へと大きく転換しますが、同時に財政健全化も確実に実現しなければなりません。
団塊の世代が後期高齢者となる25年に向け、増大する医療や介護などの社会保障費を安定的に確保しつつ、将来世代の負担を抑制する財政健全化への取り組みは極めて重要です。
歳出・歳入改革を徹底し、中長期的な視野で着実に財政再建を進める不断の取り組みが欠かせません。
新たな財政再建計画の策定を含め、今後の財政健全化の道筋について首相の答弁を求めます。
支え合いと共生社会
認知症 基本法制定すべき
地域包括ケアシステム
公明党は、高齢者がたとえ要介護状態になっても、住み慣れた地域で自立した生活を送り続けることができる社会をめざしています。
都道府県が策定する「地域医療構想」と「地域包括ケアシステム」との一体的な取り組みを推進してきたのもその一環です。これにより、在宅医療や在宅介護サービスの提供体制が進み、医療の現場も病院から地域へと広がり始めています。
しかし、高齢化のさらなる進展を考えれば、医療、介護、住まい、生活支援サービスなどを地域の中で一体的に受けられる地域包括ケアシステムの構築が急がれます。
特に、医療と介護サービスのネットワークが鍵となります。そこで重要なのが18年度の診療報酬と介護報酬の同時改定です。
例えば「医療的ケアが必要だが入院するほどでもない」というような高齢者が自宅をはじめ、医療サービスが限定されている特別養護老人ホームなどでも生活ができるようにする対応が必要です。
また今後、増加が見込まれる慢性期の医療・介護ニーズに対応するため、現行の「介護療養型病床」に代わり、医療と生活の場を一体的に提供する「介護医療院」へとスムーズに移行できるかどうかは、今後の具体的な基準や報酬が大きなポイントとなります。
認知症対策
認知症患者は年々増え続けています。15年に525万人だった認知症患者は25年には700万人を突破すると予想されています。
公明党は、認知症対策の充実、加速化をめざし、昨年8月、党に「認知症対策推進本部」を設置し、当事者や家族、有識者などと精力的に意見交換し、12月に政府に提言を行っています。
提言では特に、認知症患者の意思が最大限尊重されることが大切であり、医療や介護の一方的な提供ではなく、本人の「こうしたい」という意思決定を支援することが重要であると訴えています。
認知症患者の意思決定支援のあり方について、ガイドラインを策定し、普及を図るべきと考えます。
また、政府が策定した国家戦略となる「新オレンジプラン」には、認知症患者や家族の相談体制の充実、地域の見守り体制整備の強化や創薬などの強力な推進など多岐にわたる幅広い施策が盛り込まれていますが、これらを政府挙げて総合的に進めるためにも「認知症施策推進基本法」を制定すべきと考えます。
介護人材の確保
政府は、特別養護老人ホームをはじめ、グループホームや小規模多機能型居宅介護事業といった在宅・施設サービスの整備を加速化し、20年代初頭までに新たに50万人分の介護の受け皿を用意することとしていますが、介護人材の確保が最大の課題です。
介護人材を確保するため、私たち公明党も介護職員の処遇改善を提案し、これまでに自公政権で月額4万7000円の改善を実現してきました。
政府の新しい経済政策パッケージでも、介護サービス事業所で働く勤続年数10年以上の介護福祉士に月額8万円相当の処遇改善を行うこととしていますが、処遇改善の対象は介護福祉士だけでなく、他の介護職員の処遇改善にも充てられるよう柔軟な運用を認めることにしています。
引き続き賃金格差の解消など処遇改善に全力で取り組まなければなりません。
がん対策
長寿命化が進む中、がん対策の強化は重要です。
昨年10月に閣議決定された「第3期がん対策推進基本計画」に掲げられている「がん予防」「がん医療の充実」「がんとの共生」の3本柱の着実な推進が求められています。
「がん予防」については、たばこを吸わないことが最も効果的ながん予防とされ、徹底した受動喫煙防止対策が必要です。また、医師らの外部講師の活用による、がん教育の全国展開にも取り組むべきです。
「がん医療の充実」については、がんゲノム医療や免疫療法など、がん研究を強力に推進すべきです。
「がんとの共生」については、就労や生活支援の取り組みが重要です。中でも病気休業中に生活を保障する傷病手当金制度の使い勝手を良くすべきです。また、医療者への緩和ケア研修の充実が不可欠と考えます。
経済の好循環拡大
中小企業支援を後押し
わが国の経済は、足元で28年ぶりとなる、7四半期連続のプラス成長。4年連続の賃上げや、有効求人倍率など各種の指標も、経済再生の加速を裏付けており、デフレ脱却に向け、その歩みは確実に進んでいます。
今年こそ、「デフレ脱却を確実にする一年」にするためにも、家計所得を増やす賃上げへの取り組みが重要です。首相が3%の賃上げを経済界に要請するなか、春闘も本格的にスタートしました。政府としても引き続き賃上げの実現に向け、後押ししていただきたい。
賃上げをさらに持続的で力強いものにしていくためには、企業の生産性向上が不可欠です。特に、わが国の経済を縁の下で支え、雇用の7割を占める中小企業・小規模事業者の生産性向上が今後の鍵です。
公明党はこの視点から、設備投資やIT(情報技術)ツールの導入を支援する「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」の拡充を推進してきました。
その結果、今年度補正予算案には、ものづくり補助金とIT導入補助金を前年から630億円を上乗せして、実現すれば、より多くの中小企業が活用できるようになりました。
また、税制面からも中小企業の投資を積極的に促すため、新たな設備投資に対する固定資産税の税率を2分の1から最大ゼロにできる制度を創設することとしています。これによって、赤字の中小企業でも、設備投資の促進が図られるようになります。
足元の経済状況を絶好のチャンスと捉え、今こそ中小企業が生産性を高め、足腰の強い経営体質へと転換できるよう強力に支援すべきです。
経営者の高齢化問題
一方で、経営者の高齢化が進む中小企業の事業承継の支援強化が喫緊の課題になっています。
来年度の予算案・与党税制改正大綱では、今後5年程度を事業承継支援の集中実施期間と位置付け、事業承継する際の贈与税・相続税の現金支払い負担をゼロにするとともに、世代交代する中小企業が新しいチャレンジをするための設備投資の補助金制度を大幅に拡充するなど、予算・税制を活用し、円滑な事業承継を後押しすることとしています。
農林水産業
収入保険の周知に努めよ
TPP11(米国抜きの環太平洋連携協定)、日EU(欧州連合)経済連携協定などを受け、わが国の農林水産業は新たなステージを迎えています。
生産者が安心と希望を持てるよう、国内対策を着実に実行し、世界に誇れる成長産業を構築するチャンスにしなければなりません。その鍵は若い人材の確保と育成です。
農業については、就農の準備段階から実際の就農開始、そして経営が確立するまでの一連の流れに寄り添う支援が不可欠です。次世代の農業を担う人材へ大胆に投資し、若手農業者の育成にスピード感を持って取り組むべきです。
こうした新規就農者をはじめ、農家が安心して生産に励むためには、それを支えるセーフティーネットが不可欠です。公明党が強く後押ししてきた収入保険制度が、来年1月からスタートしますが、現場への丁寧な周知と、加入促進に努めるよう求めます。
漁業についても、新規就業者など担い手の育成が重要です。高性能の漁船や漁業用機器の導入により競争力を高めるとともに、国内消費とさらなる輸出の拡大に向けて、戦略的に支援すべきです。
林業については、森林資源を適切に管理しつつ、有効に活用していくことが喫緊の課題です。
18年度の与党税制改正大綱では、市町村が実施する森林整備の財源として、森林環境税の創設を決定しました。現場の声を十分に踏まえて制度設計し、森林資源の適切な管理と林業の成長産業化へと、つなげるべきです。
農林水産業の持続的な発展には、中山間地域や離島など、条件不利地域への支援が欠かせません。地域の特色を生かした取り組みを、力強く後押しすべきです。
防災・減災、復興
地方のインフラ整備推進
昨年は九州北部豪雨や台風21号などの局地的豪雨により、都道府県が管理する中小河川が氾濫、多くの被害が発生しました。
政府は、昨年、全国約2万と言われる中小河川の緊急点検を実施。優先的に対策が必要な全国各地の中小河川において、土砂・流木対策や水位計の設置など新たな治水対策の実施が進められることになりました。
防災・減災対策は「待ったなし」です。地方自治体の取り組みが着実に進むよう、政府は地域・現場の課題などにも十分に目配りをしながら、スピード感を持って対応していただきたい。
道路や橋、上下水道、学校施設など地方における社会インフラの整備は、安全・安心の国土をつくり、国民の命と生活、財産を守る「防災・減災対策」に直結しています。
また、「生活の利便性、生産性の向上」をもたらすとともに、地方経済に活力と成長をもたらし、雇用促進にもつながります。まさに「地方創生のエンジン」です。
公明党は「防災・減災ニューディール」の視点から、インフラの長寿命化・老朽化対策を推進してきたほか、中長期にわたって経済を成長させる「ストック効果」を重視し、社会インフラ整備を推進してきました。
地方の社会インフラ整備を進めるためには、防災・安全交付金や社会資本整備総合交付金など、地方が自由に活用できる交付金のさらなる予算の拡充が必要です。
東日本大震災から7年
東日本大震災から7年、復興の現場では、被災者や地域のニーズが多様化しています。それに対応したきめ細かな支援が、ますます重要な段階となっています。
二重ローン問題を抱える被災事業者の債務負担を引き続き軽減し、再生を支援していくため、今国会に提出予定の「東日本大震災事業者再生支援機構法」改正案を早期に成立させることが必要です。
また、被災者の生活再建支援のため、収入にかかわらず、無料法律相談や裁判などに要する費用の立て替えなどを行う法律援助事業についても、「法テラス震災特例法」改正案を早期に成立させ、事業終了後の4月以降も継続すべきです。
福島では、昨年、帰還困難区域を除くほぼ全ての地域において、避難指示が解除されました。
また、帰還困難区域についても、双葉町、大熊町、浪江町において、住民の帰還などをめざした新たなまちづくりに向けた「復興拠点」の整備がスタートしました。
帰還される方はもちろんのこと、いまだ避難生活を余儀なくされている方々が、住宅や生業を再建し、「人間の復興」を果たすため、まさにこれからが正念場です。
また、風評被害対策も喫緊の課題です。特に福島県産の農産物については、食品安全を含めた生産工程管理の認証制度「GAP」取得を全力で後押しするとともに、安心・安全の「ふくしまブランド」の育成と普及・アピールを促進していくべきです。
放射線についても、国が前面に立って、国内外への「正しい情報発信」を強力に推進すべきです。
さらに新産業を創出し、福島再生の鍵を握る「福島イノベーション・コースト構想」の取り組みも、加速させることが求められます。
所有者不明の土地
所有者不明の土地は、全国各地で増え続けており、その対策が急がれます。
この問題が顕在化したのは東日本大震災でした。住宅の高台移転の際に、所有者不明の土地が相次いで確認され、事業の遅れが深刻な問題になりました。
今国会では、こうした所有者不明の土地の有効活用に向け、新法の提出が予定されています。
法案には、所有者不明の空き地に10年以内の「利用権」を設け、広場や公園など公益性のある事業に使えるようにしたり、国や地方自治体が土地取得のために行う調査手続きの簡素化などが盛り込まれています。
利用権の設定は、こうした所有者不明の土地を巡るさまざまな課題に本格的なメスを入れる第一歩になると期待されています。
しかし、これだけでは不十分です。国民の意識改革や不要土地の受け皿づくり、相続登記の促進など、抜本的な解決に向けた議論を深める必要があると思います。
安全保障
日中間の交流、協力さらに
わが国を取り巻く安全保障環境が一段と厳しさを増す中で、いかなる事態にあっても、国民の命と平和な暮らしを守り抜くことは政府の責任です。
そのため、来年度予算案には、安全保障環境の変化に対応し、弾道ミサイルを迎撃する陸上配備型イージス・システムや敵の射程外から発射できる射程距離の長いスタンド・オフ・ミサイルの導入が盛り込まれています。
これに対して、周辺諸国からの反発や一部に敵基地攻撃が可能となるのではないかとの指摘があります。
ここでわが国の防衛力の整備について、これまでの基本的な方針である「専守防衛」や日米安保条約の下での「盾」と「矛」の日米の役割分担という考え方に変わりないことをあらためて確認しておきたい。
日中関係の改善について質問します。
昨年の日中国交正常化45周年と本年の平和友好条約締結40周年を節目に、日中関係が大きく改善されつつあることは日中両国にとって、また東アジアの平和と安定にとっても大いに歓迎すべきことと考えます。
昨年末、私は、自民党の二階幹事長とともに訪中し、第7回日中与党交流協議会に参加。習近平国家主席らとも会談し、日中関係の改善に向け、双方が努力することをあらためて確認できたことは大きな意味があったと思います。
交流協議会では、中国が提唱する「一帯一路」構想に関し、具体的な協力の検討や、観光、ビッグデータ、IoT(モノのインターネット)などについて2国間の実務協力を強化すること、日中企業間のさらなる協力の推進、朝鮮半島問題について共に努力して平和的解決に結び付けていくことなどを盛り込んだ提言をまとめました。
政府としても、この提言を積極的に受け止め、日中間の交流促進や協力関係の強化などに取り組んでいただきたいと思います。
自公連立政権・安倍内閣が発足して5年。自民党と公明党の安定した政権基盤の下、力強い日本経済の再生や地方創生、社会保障の安定、復興の加速、防災・減災対策の強化などに着実に取り組んできました。
今後、さらに働き方改革の断行や生産性革命、「全世代型」社会保障制度の構築などに全力で取り組み、誰もが生活に張りを持ち、その能力を十分に発揮できる時代を切り開かなければなりません。
公明党は、あらゆる課題解決に真正面から向き合い、これまで以上に「現場の課題は何か」を真剣に受け止め、わが党に求められている国民の期待にしっかりと応えていくことを、お誓い申し上げ、私の代表質問を終わります。
井上幹事長に対する安倍首相らの答弁(要旨)
【安倍晋三首相】
一、(働き方改革について)今回、労働界や経済界の合意の基に、史上初めて、三六協定(労使協定)でも超えることのできない罰則付きの時間外労働の上限規制を設ける。同一労働同一賃金を実現させ、雇用形態の不合理な待遇差を禁止し、非正規という言葉をこの国から一掃したい。
一、(教育負担の軽減について)幼児教育の無償化は2020度までに3~5歳の全ての幼稚園、保育園、認定こども園の費用を無償化する。対象範囲については、現場や関係者の声を踏まえ、この夏までに結論を出す。
0~2歳児も住民税非課税世帯に対して無償化する方針だ。待機児童解消に向け、20年度までに32万人分の受け皿を確保する。
一、(ひとり親世帯の支援について)公明党の提案を踏まえ、18年度予算では、保育料の算定などにおいて、未婚のひとり親世帯に対する寡婦控除のみなし適用を実施する。
【石井啓一国土交通相】
一、(所有者不明の土地問題について)国土交通省は、登記制度を所管する法務省など関係省と連携しつつ、引き続き土地所有者の責務のあり方など、基本制度の見直しについて検討を深めていく。