eコラム「北斗七星」

  • 2018.01.29
  • 情勢/社会

公明新聞:2018年1月27日(土)付



親の虐待で命を絶たれる子の無念はいかばかりか。昨年末の事件は4歳児が犠牲となった。おどけた笑顔で舌を出す新聞掲載の顔写真が忘れられない。全身には異なる時期にできた数十カ所のあざがあったという◆嫌な事件が後を絶たない。何ら抵抗できずに奪われていく幼い命。「何のために生まれてきたのか」。ニュースで同様の事件を知るたびに悲しみがこみ上げてくる。そんな人は少なくないだろう◆<うまれてすぐに こわれて消えた>。夭逝した子への鎮魂歌という説もある童謡シャボン玉の一節だ。作詞者は野口雨情。野口は長女を生後すぐ失った。彼が没したのが1945年の今日だった◆この童謡シャボン玉の歌詞が小説『愛しの座敷わらし』(荻原浩著)に登場する。東京から田舎に引っ越した一家が、座敷わらしとの出会いを機に家族の絆を取り戻してゆくというストーリーの後半だ◆同著では、座敷わらしは「間引きされた子どもの化身」とされ、間引きの話を聞いて内容を知った一家の小学4年生になる男子が、座敷わらしとシャボン玉遊びに興じる場面で歌詞が引用されていた◆やがて東京へ戻る一家。座敷わらしはどうなるのか。ほっこりする結末に笑みがこぼれた。冒頭のような悲惨な事件が一件でも少なくなることを切に願う。(六)

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